全ロックファン必聴! サントラ『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3 オーサム・ミックス Vol. 3』を全17曲徹底解説

全ロックファン必聴! サントラ『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3 オーサム・ミックス Vol. 3』を全17曲徹底解説 - ©Marvel Studios 2023©Marvel Studios 2023

2014年に公開された『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズ第1弾のオープニングシーンで、クリス・プラット演じるスター・ロードが、よりによってウォークマンに手を伸ばし、カセットテープに「オーサム・ミックス vol. 1」と書かれていたのを観た瞬間に、心を鷲掴みにされた音楽ナードは大量にいたはずだ。しかもレッドボーンの“カム・アンド・ゲット・ユア・ラヴ”に合わせて、スター・ロードがコミカルなダンスを披露したから、これより前に公開されたスーパーヒーロー映画の完璧なオルタナであることも決定。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』(2017年)のオープニングでは、今度はベビー・グルートが戦闘シーンを背景にしながら、エレクトリック・ライト・オーケストラの“ミスター・ブルー・スカイ”で踊ったので、引き続きその期待は裏切られなかった。

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』と言えば物語と同じくらい大事なのが、サントラだ。それは、監督のジェームズ・ガンも認めているところで、実際、サントラのアナログ盤の売り上げが驚異的だし(注1)、カセットテープにおいてはブームまで作ってしまった(注2)。「最初の2本の映画が、サントラだけでアイコニックなものになっているのは知っている。だから今回もみんなをガッカリさせたくなかったし、その2本と同じくらい優れたものにしたかった。だから、この『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』で一番難しかったのはサウンドトラックを作ることだった」(majorfilmevents)とまで語っていた。

さらに、「3本の中でもこの映画のサントラが一番難しかった。最初の2本は、メレディス・クイル(スター・ロード/ピーター・クイルの母)が好きな曲で、70年代のトップ40の中から選べば良かった。だけどこの映画では、2作目の終わりで、ヨンドゥがピーターに渡したZuneからの曲で、そこには300曲も入っている。時代も、70、80、90、2000年代から選べたから、つまり全てのポップミュージックの中から選べたことになる。何度も曲を変えながら、シーンに合うものを探した。結果にはものすごく満足しているよ」(Fandango)とも語っている。

監督はサントラに使えそうな曲400曲くらいが入ったプレイリストを作り、その中から選んだという。脚本には最初から曲名も書かれていて、撮影中に流したりもしたそう。俳優達も音楽を聴いてそのシーンのエモーションを理解できたそうだし、監督は撮影前に俳優達にもミックステープを渡しているそうだ。監督にとって、曲選びで一番大事だったことは、何よりシーンに合うこと。そしてその中に、彼が子供の頃から好きだった曲や彼のヒーローの曲、結婚式で流した曲など個人的な思い入れのある曲も数曲入れたそう。「音楽が常に人生のサントラであることが好きだし、だからこの映画の中でも音楽が物語を語ってくれている」(BBC6)

今回サントラに収録の17曲にテーマがあるとすると、ずばり、「サンディエゴ・コミコンで見せた予告編の中で唯一使われていたのは、ザ・フレイミング・リップスの“ドゥ・ユー・リアライズ??”だったけど、あのスペイシーで、メランコリーで、美しくて、愛がある曲こそが、今回のサントラのテーマだ。レインボーから、ザ・フレイミング・リップスから、スペースホッグの曲まで共通点のある曲を選んだ」(Fandango)と語っている。

主演のクリス・プラットもこう語っていた。「3作の中でも今回のサウンドトラックが最高だし、しかも一番感動的だ。ジェームズはこれまでも、隠れた名曲を“発掘”するのが上手かったけど、それは僕ら出演者の選び方にも似ている。ダイヤモンドの原石を見つけて来て、それに磨きをかけて、みんなの前に見せてくれるような感じだ。今作のオープニングの曲はとりわけエピックだよ」(Fandango)

以下、監督のコメントも可能な限り集めながら、それぞれの曲を解説したい。
曲がどの場面でかかるかなどネタバレとなる場合もありますので、気にされる方は鑑賞後にお楽しみください。

文=中村明美



1. クリープ(アコースティック・ヴァージョン)/レディオヘッド(1992年)
ジェームズ・ガン「オープニングのこの曲が、映画の中心だ。アコースティック・ヴァージョンを使ったのは僕がこのヴァージョンがずっと好きだったから。この曲には個人的な思い入れがあるんだ」(Absolute Radio)。

オープニングシーンがアイコニックなのがこのシリーズの特徴だが、『3』も過去2作に負けない。ただし、“カム・アンド・ゲット・ユア・ラヴ”とも“ミスター・ブルー・スカイ”とも大きく違うサウンドの“クリープ”が、『3』は、これまでにないダークでヘヴィでエモーショナルな物語となることをまず告げている。

『3』の主人公はロケットなので、彼が、ノーウェアを歩きながら、《What the hell am I doing here? I don’t belong here》と歌うが、「自分はここに属さない」と言う歌詞は、ロケットのみならず、ガーディアンズ全員が思っていることで誰もがこの世界で自分の居場所を探している。それは、監督自身も最も共感する部分なのだ。もともと、監督はこの孤独で傷付いたロケットに自分が最も重なると言っていたが、「僕はいつも友達の中に入れない子供だった。パンクロックキッズだったけど、パンクスとも全く違うものの見方をしていたし。ロケットは、始めはイノセントで優しい奴だったのに、初期の頃のトラウマを隠すために、怒りを抱えるようになる。ここでは、何がロケットに起きたのかを学ぶ。彼の抱える恐怖感が何なのかを。それから家に帰ることの物語だ。大人になって自分の生まれた場所へ帰ることについて」(ローリング・ストーン)と語っている。

また、「『1』は母について、『2』は父について、『3』は自分についてだ。そして自分が嫌いな自分を受け入れることについて」(Fandango)とも語っていて、最終的には自分を受け入れることこそ、正に“クリープ”でトム・ヨークが歌っていることでもある。レディオヘッドの代表曲だが、あえてアコースティック・ヴァージョンであることで、より孤独やエモーションがあらわになる圧巻のオープニング。



2. クレイジー・オン・ユー/ハート(1976年)
ジェームズ・ガン「この曲だからぴったり合う」(Absolute Radio)
 
ノーウェアに突然やって来て、ロケットを追いかけるウィル・ポールター演じるアダム・ウォーロックが登場する時に流れる曲。ハートの代表曲でもあるクラッシックロックの名曲は、アコギに始まり、急展開でバンドの当時の特徴でもあったスピード感あるロックソングに変貌。「今夜あなたに夢中」と男女の恋愛についてアコギとエレキの普通じゃない掛け合いで情熱的に歌われる曲だが、ここではそれがアダムがロケットを追いかけるスピード感と“情熱”を象徴している。



3. シンス・ユー・ビーン・ゴーン/レインボー(1979年)

ガーディアンズがアダムに攻撃されたロケットを救いに行く時に流れるので、《君がいなくなって/耐えられない》という歌詞もぴったりだし、そのサウンドが、みんなの団結を英雄的なハードロックアンセムとして響かせている。

この曲はレインボーによるラス・バラードのカバーであり、バンドが意識してポップにしたが故に、メンバー間でも論争が起きた。しかし、結果的にはバンド初の全英シングルチャート入りを果たす最も人気のある曲のひとつとなった。何より、パワフルなギターリフとドラマチックなボーカルとハーモニー、軽快なドラムサウンドには、MCU的なポップさがあってヴァイブスがぴったりだし、シーンにも思い切り弾みをつけてくれる。この曲が収録されたアルバム『ダウン・トゥ・アース』のジャケットも宇宙に地球と虹でぴったりだ。



4. イン・ザ・ミーンタイム/スペースホッグ(1995年)
ジェームズ・ガン「スペースホッグのこの曲は宇宙空間的な曲であり、これは宇宙空間のシーンなわけで、だからこの映画にぴったりなんだ」(Absolute Radio)

ガーディアンズが、オルゴスコープを浮遊する時に流れる曲。鮮やかな色のスーツを着て、なんとも美しくリラックスした浮遊感がたまらない瞬間。この曲は、予告編「特報」でも使われていたが、ロケットの感動的な言葉「最後にもう1度、みんなで一緒に飛ぶんだ。果てしない美しい空へ」とともに、90年代のオルタナギターとメロディが流れ、この最終章が非常にエモくなることを告げてくれていた。

《みんなも君と同じだ。君の全てを愛している》という歌詞で、「自分を受け入れて、最後はきっと大丈夫だから」というメッセージの曲。しかし、《でもそこに辿り着くまでは、うまくいかない事もある》という、“クリープ”と同様の、自分が嫌いな自分を最後には受け入れるんだという苦悩の中から希望を見出そうとするテーマがある。また、この曲が収録されたアルバム名は『Resident Ailen』でエイリアンのパスポートがジャケット。地球にいても異星人感があるのは、映画のテーマにもハマっている。



5. リーズンズ/アース・ウィンド&ファイアー(1975年)
グルートが、ガーディアンズを救済に向かう時に流れる。

ソウルフルなR&Bバラードが、その他の曲とは違う意味でのたまらない浮遊感を漂わせるグルーヴの曲。フィリップ・ベイリーのファルセットが最高に気持ち良くサントラの中でも最も甘くクールなヴァイブスを放っている。それだけでもこの曲が使われる理由になるくらいだ。歌詞では、《一晩中君を愛したい》と歌う一方で、《幻想》や《理由が全て消えていく》とも歌うワンナイトスタンドの曲だが、「全力で君を愛したい」「理由なんていらない」という愛の歌と勘違いしている人も多い。《リアルになるには間違った場所にいる》ことと「愛」が、この映画のテーマとは重なる。



6. ドゥ・ユー・リアライズ??/ザ・フレーミング・リップス(2002年)
クリス・プラット「本当に感動的な曲で、曲を聴いた時に浮かび上がるイメージが最高だ。3部作が終わりを迎えることを感じると思うし、同時に主人公達のここまでの旅路を思い出すと思う。本当に感動的な物語があるから」(サンディエゴ・コミコンでの記者会見)

宇宙船に乗ったスター・ロードが、カウンター・アースの創造主であるハイ・エボリューショナリー(チュクーディ・イウジ)に会いに向かっている時に、イヤホンから流れる曲。宇宙を浮遊しながら孤独を感じていて、サイケデリックな時間が流れる美しいシーン。ドラックス(デイヴ・バウティスタ)に遮られて現実に戻る。

《気付いてる?僕らは宙を浮いていることを。気付いている?幸せだと泣いてしまうことを?気付いてる?知っている人は全員いつか死ぬことを?》という歌詞が、スター・ロードの内面ばかりか、ロケットの心の葛藤をも的確に表現し、この映画のテーマ曲とすら言える曲。そもそも、ザ・フレーミング・リップスのウェイン・コインも、この曲のインスピレーションについて、「この宇宙で、地球に住んでいることの科学的な現実について分析すると、つまり太陽の周りを回っていて、宙を飛んでいるわけだから、とんでもない恐怖に襲われる。僕らの存在がいかに脆いのかに気づかされる」(flaminglips.com)と語っていたが、その内容すら主人公達の心境とぴったりだ。

冒頭で監督のコメントを紹介したように、“クリープ”と並び、この映画の核心を突いている。宇宙空間で心の脆さが溢れ出て、心が痛くて、哀しくて、しかし高揚感があって、全ての感情が詰め込まれた曲。



7. ウィー・ケア・ア・ロット/フェイス・ノー・モア(1985年)
ガーディアンズが、カウンター・アースに到着した時に流れる曲。

西海岸ベイエリアのハイブリッドバンドによるこの曲は、リリース後に何度か変遷を遂げているが、これはチャック・モズレーによるオリジナルヴァージョン。不気味なシンセサイザーと何よりベースラインがこのシーンの不穏な空気にぴったりだし、《そりゃ大事な問題だと思ってるよ/ライブ・エイドとか》と80年代のメインストリーム、ポップカルチャーを皮肉るこの曲の反抗的な態度こそ、カウンター・アースに乗り込んでいく心境を象徴している。



8. 子犬のカーニバル〜子犬のワルツより〜/エハミック(2018年)
カウンター・アースで、ピーターとグルートとネビュラ(カレン・ギラン)が、ハイ・エボリューショナリーのところに向かう時に車の中で流れる。

日本人アーティストとしては初めて起用されたエハミックによるこの曲は、ショパンの名曲が、ボーカロイドでアレンジされるという、最もかけ離れた世界観をつなぎ合わせた奇妙な曲だがどこか現実感があり、主人公達が目撃している状況にもぴったり合っている。さらに、この曲のポップさもサントラにしっくりと馴染む。これから世界中の人に聴かれることになるだろう。


9. 虹を追いつづけて/アリス・クーパー(1976年)
ジェームズ・ガン「曲を選んだら、すごく多くの人に聴かれるのは分かってるから、良いバンドの曲を使いたいと思うものなんだ。それから、僕が個人的に好きなバンドも使っていて、リプレインスメンツもそうだし、そしてアリス・クーパーは、僕のヒーローなんだ。映画の中でも非常に大きなシーンで使っている」(Mama’s Geeky)

ボウィ号の中で、ガーディアンズが去った後、ほぼ意識を失っているロケットに聴こえるようにと願うように流れる曲。1917年に発表された有名なボードビルの曲をクーパーがカバー。《虹の終わりには幸せが待っている》と始まり、その一方で《僕はいつでも虹を追いかけているだけ》《結局は雨に降られるんだ》と歌うこの曲は、正にロケットのテーマ曲とすら言える。オープニングで、ピアノとクーパーの歌い方が優しく響き、そこから宇宙の広さにも合う劇的に壮大な曲に展開しエモーションが掻き立てられる。



10. サンフランシスコ/ザ・モーグリス(2012年)
ジェームズ・ガン「この曲は僕と妻(ジェニファー・ホランド)が結婚した直後に流れた曲だ。クラグリンを演じた弟のショーンが結婚式を行って、『これで夫と妻です』と言った瞬間にこの曲が流れてキスしたんだ。それで2人で歩き始めて、みんなが後に続いたんだけど、クリス・プラットもいた。だから、この曲には個人的なつながりがある」(BBC6)

ガモーラ(ゾーイ・サルダナ)がボウィ号を操縦し、ほとんどピーターを殺しかける最もカオスなシーンで流れる。LAのオルタナバンドによるこの曲では、《サンフラシスコで気を失い、霧が消えるのを待っている》闇の時代だったが、「愛」を見つけてみんなで進んでいきたいと一気に駆け上がるように未来が歌われる。エネルギーに溢れ、しかしどこか切なく、希望があってしかも泣ける、正にこの映画のサントラのテーマに沿った曲だ。



11. プア・ガール/X(1983年)
ノーウェアの住人達であるビゼミキトコロク(レット・ミラー)からクラグリンに、コスモ(マリア・バカローヴァ)などがポーカーをやっている時に流れる。

LAのパンクバンドXのこの曲は、疾走感と甘美さが入り混じるサウンド。《家の中にいて、窓は黒く覆って》《かわいそうな女の子、家から逃げ出した》という歌詞が、発売当時に青春時代だったはずの監督の心も言い当てていたはずだ。大人になって、家に帰るまでの道のりを描くこの映画の物語も語っている。



12. ディス・イズ・ザ・デイ/ザ・ザ(1983年)
ピーター達が、ハイ・エボリューショナリーから、ネヴュラとドラックスとマンティス(ポム・クレメンティエフ)を救いに向かう時に流れる。

UKポストパンクバンド、ザ・ザによるこの曲は、正に「今日がその日」と立ち上がる日がきたことを告げるこの瞬間のために書かれたような曲。
《窓を黒く覆って》《家の中にいた》(“プア・ガール”)主人公が、《昔の手紙を読んで》過去を振り返っていたところから、《カーテンを開けて、太陽の光に目が焼けて/真っ青な空に飛行機が飛んでいくのを見る》《今日がその日/人生が必ず変わる》ととうとう決意する。それがアコーディオンと、パンクロックと、マット・ジョンソンが自分に言い聞かせるようなボーカルが交差する、マジカルなこの曲で表現されている。そんな決定的な瞬間にこの曲を使っているところも、MCUの中でこの映画がいかにオルタナなのかを象徴していると思う。



13. ノー・スリープ・ティル・ブルックリン/ビースティ・ボーイズ(1986年)
ジェームズ・ガン「時にみんながこれだ!と思うような曲をかけなくちゃいけない。これがその瞬間だ。ビースティ・ボーイズは、普段は映画での曲使用の許可も簡単にはくれないバンドだし、サントラ収録に関してはほぼ許可は出したことがない。だけど、僕らには映画にも使わせてくれたし、サントラ収録の許可もくれた。彼らが『ガーディアンズ〜』のファンだったかららしい。本当に感謝している。すごくクールだと思うよ。過去にもフリートウッド・マックとか、ジョージ・ハリスンなどサントラの許可をもらうのが非常に難しいバンドはいたけど、同様に『ガーディアンズ〜』が好きなおかげで許可をくれたんだ(注3)」(Absolute Radio)

監督が言うように、これぞ映画のクライマックスであり、ガーディアンズが結集して、ハイ・エボリューショナリーとの戦いを繰り広げる最高の瞬間に流れる。
デビュー作『ライセンス・トゥ・イル』に収録されたバンドの代表曲にして今作に収録された唯一のヒップホップの曲だ。「ブルックリンに着くまで眠れない」と宣言するパンクスピリッツが溢れる勇ましい幕開けこそこのシーンにぴったりだし、スレーヤーのギタリスト、ケリー・キングによるギターソロが劇場に鳴り響くと、最高にカッコ良くて盛り上がる。ビースティとしては、ツアー中の疲弊からできた曲だが、《ぶっ倒れないで家までたどり着くんだ》という歌詞はこの映画のテーマにもしっかりと合っていて最後まで歌詞が物語を語っているからさすがだ。



14. ドッグ・デイズ・アー・オーヴァー/フローレンス・アンド・ザ・マシーン(2008年)
ジェームズ・ガン「この曲は、2000年代のこの20年間で最高のポップソングだと思う」(HeyUGuys)
フローレンス・ウェルチ「映画を観ながらずっと泣いていたんだけど、ガーディアンズが“ドッグ・デイズ・アー・オーヴァー”で踊り出した瞬間もう涙が止まらなくなった。このシーンでのみんなの愛をどうもありがとう。子供の頃からスーパーヒーローに夢中になってきた自分にとってこんなことが起きたなんて信じられない🖤X」
https://www.tiktok.com/@florence/video/7230814909494349082
Zuneのプレイリストが2000年代に合わせられ、戦いの後の最後の祝祭で流れる。みんなが踊って盛り上がる感動的なシーンだ。
タイトル通り、「辛い時期は終わった」と祝福する曲だが、冒頭で歌われているように、幸せが突然やって来たことを歌の主人公はまだ信じられていない。それだけ辛い時期が長かったことを象徴しているし、それはこの『ガーディアンズ〜』の主人公達の長い旅路にも当てはまる。だからこの祝祭がより感動的になるのだ。フローレンスの声によって、とうとう自分に救済が訪れたこと、自由を勝ち得たこと、闇から光が降り注いだ喜びが感動的に表現されている。



15. バッドランド/ブルース・スプリングスティーン(1978年)
ジェームズ・ガン「美しい曲だからね。歌詞を聴けば、『ガーディアンズ〜』にぴったりだとよく分かる。それに、ブルース・スプリングスティーンを1曲も使わないで、3本を終えたくなかったんだ。ブルースは絶対に必要だから。ザ・リプレイスメンツはクレジットの直前に使えたから、最後にブルースを使えてクールだと思った」(USA TODAY)

クレジットの最後で流れる曲。

アニマルズに影響されたというこの曲は、ピアノサウンドが高揚感のある曲だが、監督の言う歌詞で歌われているのは、スペースホッグの“イン・ザ・ミーンタイム”でも歌われていた、「間」にいる閉塞感だ。荒れた社会と自分の理想の間。しかし、それでもこの《荒れ地で日々生きていかなくちゃいけない》《理解されるまで進み続けなくちゃいけない/いつか荒れ地に報われる》と「愛」と「希望」を信じて突き進む歌だ。監督が言っていたように、だからこの映画にぴったりだ。



16. アイ・ウィル・デアー/ザ・リプレイスメンツ(1984年)
ジェームズ・ガン「この曲は僕がまだ若い時にアルバムが発売されて、その時から大好きな曲で、僕の人生においても偉大な意味がある曲なんだ。だから入れたかったんだ」(Absolute Radio)

最初のエンドクレジットで流れる監督の個人的な思い入れが感じられる曲。

監督は、ザ・リプレイスメンツについて、エッセーまで書き、プレイリストまで作っている。その中で、「1984年に『Let It Be』が発売された時に、初めてザ・リプレインスメンツのアルバムを買って聴き、まるで自分のために作られたと思った」と書いている。「ザラついてるけど、ピュアなロックで、ポップなメロディとリフがあって、感動と絶望があって、時々希望と人間性が垣間見られる」。中でも、この“アイ・ウィル・デアー”については、「“サティスファクション”や“スメルズ・ライク・ティーン・スピリット”と並びロックンロールクラッシックの神殿入りするべき」とまで書き、プレイリストの1曲目に選んでいる。
https://www.facebook.com/jgunn/posts/10154941995296157
監督が言うように、今ではローリング・ストーン誌も80年代を代表するアルバムの1枚に『Let It Be』を選んでいる。


17. カム・アンド・ゲット・ユア・ラヴ/レッドボーン(1973年)
『ガーディアンズ〜』の歴史の幕開けを飾り、『ガーディアンズ〜』のテーマソングとすら言えるこの曲で終わるのは、物語が結果としてハッピーエンドになったことを告げているようだ。

また、今となってはMCUの中でも最もアイコニックなオープニングになったと、スター・ロードのコミカルなダンスを観た時の衝撃も思い出し、彼らのここまでの長い旅路を思ってじんとくる。この軽快なアップテンポの曲で締めくくられると心も軽やかになるし、監督がこの作品の究極のテーマについて、「思いやりこそがこの星の全ての問題を解決してくれる。すべての生き物にその思いやりが持てれば、もっと満ち足りた人生が送れる。この映画で言いたかったことはそれなんだ」(USA TODAY)と言っていたけど、そんな温かい気持ちで満たされ、笑顔にならずにいられない。そんな風に最後を締めくくってくれる監督が最高だ。




(注1)『〜オーサム・ミックス Vol.1』は、既存の曲のみが収録されたサントラとしては史上初の1位を獲得したばかりか、全米チャートでは16週間も1位。アメリカだけで175万枚を売り上げた。しかも、『〜オーサム・ミックス Vol.1』は、なんと2010年代の10年間で最も売れたアナログ盤ランキングで3位。ジェームズ・ガン監督も「これは狂ってる」とIGにポストしていたけど、ザ・ビートルズ、ピンク・フロイドの次が、『ガーディアンズ〜』じゃ、そりゃ「狂ってる」。

(注2)カセットテープブームも牽引。
『〜オーサム・ミックス VOL.2(オリジナル・サウンドトラック)』の時には、発売された2017年に最も売れたカセットテープとなり、2位も『〜オーサム・ミックス Vol.1』、3位も『Marvel's Guardians of the Galaxy: Cosmic Mix Vol.1 (Music From the Animated TV Series)』。今となっては、アメリカのカセットテープブームまで起こしたと言える。アメリカでは、2017年にカセットテープの売り上げが35%も上昇。2022年も、28%も上昇。しかも、2022年に最も売れたカセットテープの1位はいまだに『〜オーサム・ミックス VOL.2(オリジナル・サウンドトラック)』。10位以内に3枚も入っている。

2位テイラー・スウィフト『ミッドナイツ』
3位『〜オーサム・ミックス Vol.1』
4位ハリー・スタイルズ『ハリーズ・ハウス』
5位ビリー・アイリッシュ『ハピアー・ザン・エヴァー』
6位『Marvel's Guardians of the Galaxy: Cosmic Mix Vol.1 (Music From the Animated TV Series)』
7位ニルヴァーナ『ブリーチ』
8位ボー・バーナム『Inside (The Songs)』
9位バッド・バニー『YHLQMDLG』
10位ゴースト『Impera』
https://www.forbes.com/sites/markfaithfull/2023/04/20/dust-down-your-sony-walkman-cassette-sales-are-soaring-again/?sh=41e5f8c574b1


(注3)今まで一番許可を取るのが難しかったのは、“ミスター・ブルー・スカイ”だったそう。どうしても許可をくれなくて何度も手紙を書いてお願いしたそうだ(Absolute Radio)。また、使いたかったのに入れる場所がなかった曲も何曲があり、ニック・ロウの“恋するふたり”は3作ともリストに入っていたのに、合うシーンがなかったそう(Mamas Geeky)。
また最新作でどうしても使いたかったのに権利関係が複雑すぎて許可が降りなかったのは、ローズ・オブ・ザ・ニュー・チャーチの“ロシアン・ルーレット”ともツイートしていた。






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