インタビュー=風間大洋
──今年はフェスのラインナップにもよく名前が挙がっていますよね。サビの訴求力みたいなものをもっともっと高めたい、もっともっとやってやろうぜっていう観点からアレンジを進めていった(吉田)
吉田崇展(G・Vo) そうですね。やっぱり出れたら楽しいので、めでたい年だし出たいねって大きな声で言ってます(笑)。
──本格的フェスシーズンを前に、今バンドとしてはどんな感じで過ごしてるんですか?
鷲見こうた(B) 最近は7月に北海道であるワンマンライブ(取材時点では未実施)のセットリストを組んだりリハとかをやっていたり。新しい曲を演奏する機会に向けて時間を多く割いてますね。
吉田 ちょっと前までやってたレコーディングを終えて、わりと伸びやかな気持ちで音楽と向き合ってるかも。
──春頃からしばらく続いていたスタジオワークが一区切りついた感じ?
鷲見 ちょうど区切られたところですね。
山岸りょう(Dr) レコーディングモードからライブモードに一旦切り替わってという感じです。
──10周年イヤーとしては折り返しに差し掛かったところですが、感覚としてはようやく助走が終わったという?
山岸 そうですね。本当、ずっと助走してた感じなので(笑)。
鷲見 10周年イヤーに入ってからも、10周年のためにずっと仕込んで仕込んで(笑)。ありがたいことにいろんなお話をいただいて、それは楽しいことなんですけど、仕込んでるうちに10周年が終わっちゃうかも!?って。でもようやく、いろいろと世に出していく準備に入ったというか。
──あらためて、今年ここまでにリリースした曲の受け止められ方はどう感じてますか?
吉田 “友達のうた”はずっと昔からやっている曲とあらためて向き合ういい機会になったし、“ローリンローリン”は銀シャリのおふたりに捧げようって気持ちで書いた曲ですけど、自分たちがバンドで音楽をやるっていうことにも通じる曲にもなったなって。お客さんにも、曲の楽しさをシンプルにストレートに掴んでもらってる気がする。
鷲見 JAPAN JAMが初披露だったんですけど、“ローリンローリン”をやりますってなったらお客さんがワッと沸いたのが印象的で。
吉田 うん。バーンとやって「いえーい!」ってなれる曲を、このタイミングで作れてよかったなって。
鷲見 今までみたいにゆっくり時間をかけてドラマを作っていくより、イントロが鳴り始めた段階から空気を作っていけるように心がけた曲なので。ライブで鳴り始めた瞬間に色が変わっていくみたいな面は、他の曲より強いのかなと感じますね。
吉田 演奏はけっこう難しくて緊張感はあったんですけど、だんだん慣れてきて。こうなってくるといちばん優等生じゃないですけど、セットリストの中でもこちらのアイデア次第でどうとでもなってくれそうな曲で、これからもすごく楽しみですね。
──うん。すごくキャッチーだし勢いもある、いわゆるキラーチューンとなっていきそうですよね。で、今回の“大喝采”もまた、毛色こそ違いますけど訴求力の強い曲になっているなと。
吉田 ありがとうございます。「訴求力、強かろう」と思いながら作ってました(笑)。
──そういう曲にしようと思って作っていったんですか。
吉田 どう……なんだろう?
鷲見 完成形ほどではなかったかもしれない。サビは完成形と大差ないですけど、そこに至るまでは結構いろいろと試していた記憶はあるから。
吉田 確かに。……ちょうど「訴求力」っていうワードが芯を食ってるなと思ったので使わせてもらうんですけど、もともとサビのいいメロディができたなと思ってたところから、普段だったら「こういう音で、こういう流れにしたら気持ちいいんじゃないか」という考えでトータルコーディネートするんですけど。今回はそのサビの訴求力みたいなものをもっともっと高めたい、もっともっとやってやろうぜっていう観点からアレンジを進めていったかもしれない。今まで自分たちが持っていなかった発想を詰め込んだ楽曲でもあるし、そういう意味でも訴求力っていうワードがピンときましたね。
山岸 やっぱり今回プロデューサーで入ってもらった久保田さんの存在もありますね。違う視点でのアプローチを提案してくれて、「あ、そういう方法もあるんだ?」って気づきがいっぱいあって。外の世界とぶつかることで初めて自分たちの輪郭がちょっと見えた、みたいな(山岸)
吉田 めちゃくちゃ大きかった。すごい技術とアイデアを持っている方だから、黙ってたら自分たちの曲じゃなくなっちゃうくらいのエネルギーをたくさんぶつけてきてくれて、「じゃあどうしよう?」というところで一気に組み上がっていく感覚があって。
──久保田さんと一緒にアレンジしようという話は、どう出てきたんですか。
山岸 自分たちだけでワンコーラスくらいは作っていたところに、よりビルドアップするための道として久保田さんと一緒にやることをビクターのディレクターから提案していただいて。で、しばらく話し合いました。このまま行ってたとしても絶対に我々の曲としてできあがる曲を、プロデューサーとやることで失敗したら怖いよね、という葛藤もあって。
吉田 さっき控室で最初期のデモを聴いたけど、めちゃくちゃよかったもん(笑)。
鷲見 あれはあれで別の曲に活きそうなくらい、完成形からは遠いからね。
山岸 80年代っぽい16ビートでブラックミュージックみたいなノリは最初からあったけど──。
鷲見 だけど印象としてはもっといなたかったかも。
──最終的に外の力を借りようという決め手はなんだったんですか?
吉田 この曲に限らず、いろんな可能性のある曲を作ってるぜっていう気持ちはあるから、外からの力をもらうことがいい道として機能することもあるんだろうなというのは、ずっと考えてました。10周年だし、“大喝采”っていう曲といろんな巡り合わせが重なって、久保田さんという情熱と力のある人と一緒にできるチャンスが来た。新しくていいものを作ろうという、ずっとやってきた営みの一環であることは間違いないと思います。
──で、やってみたら久保田さんはどんどん提案をくれるタイプの方だったと。
鷲見 そうですね。言葉に出すよりも実際に楽器を持って「こんなのどう?」っていうアイデアに対してフレーズで応えていく、フレーズで大喜利していくみたいな緊張感があって。メンバー内で見せたり試すのとは違う恥ずかしさみたいな(笑)。
──手の内を晒すような。
鷲見 そう。出てくるアイデアの限界みたいなことまで知られてしまう怖さがあって(笑)。
山岸 「持って帰って考えます」とかもあんまりなかったし、瞬発力で「こっち!」っていうね。
鷲見 そうなると自分の持っているロジックもうまく働かなかったりするけど、そのぶん「あ、いいじゃん」とか言ってもらえると嬉しくて。ずっと緊張感はあったんですけど、すごく刺激的な時間でした。
吉田 あとはやっぱり、全然デッキが違うって思いました。そもそも我々はバンドっていう閉じられた空間の中で醸してきたものを育ててるんですけど、久保田さんは全く別のところで第一線でやってこられたんだなって。「そういう捉え方をしてなかったな」と思うようなアイデアがたくさんあってどれもが新鮮で面白いけど、どれならバンドとして選んでよくて、どれは「それは違うんです」って言わなきゃいけないのかは慎重になったし、そこも緊張感はありましたね。
山岸 なんか、外の世界とぶつかることで初めて自分たちの輪郭がちょっと見えた、みたいな。ズーカラデルはこれはよくて、これはダメなんだみたいな部分にも自覚的になって。
──それはたとえば?
吉田 メロディから一旦リセットして考えてみる時間があったんですけど。かっこいいリズムとかコードの入ったものがだんだん組み上がって、それをどうすればいい感じにできるかを考えた時に、自分の脳裏に浮かんできたメロディを試しに録音してみたら「あ、これならズーカラデルの新曲として素直にいいものかもしれない」と思えた瞬間があったりして。ボーカリストとしてはそんな感じでした。
──サウンドの面で久保田さんから出てきたアイデアが肝となっている部分を挙げるとすれば?
山岸 イントロとかはかなり──。
吉田 うん。イントロのコーラスは突然久保田さんから飛んできて、「すごくいいけど、これは本当に俺らがやっていいのか?」って思う感じだったんですけど、言葉の入れ方とかを工夫したら「これならいいかもしれない」となって。曲がかなりキャッチーに、外向きになった瞬間ではありましたね。
山岸 いかに我々らしいサウンドにしていくのか、イントロに関しては特に考えたかもしれないですね。
──その中で、この80’sポップス感は元々備わっていたということでしたが。
吉田 80’sっぽさを、今のギターロックバンドと呼ばれる我々が解釈した音として鳴らすとどうなるか?っていうのをやりましょう、と言っていて。だからあんまり「ちゃんと再現しましょう」っていう話ではなかったんですけど、久保田さんというガチの再現ができる人と、再現というより自分たちの匂いみたいなものを出していきたいと思ってる人たちの、ちょうどいいところが重なった曲になったかなと。