元々カエラ・マリチッチの一人プロジェクトとしてスタートしたザ・ブロウ。インディ・メディアから軒並み絶賛を浴びた06年の『Paper Television』の時はカエラとYACHTのジョナによるデュオだった。新メンバー、メリッサが加入、ジョナが去り、拠点もNYに移し新生ザ・ブロウとしてのセルフタイトル・アルバムとなる。ライヴではモノローグやインスタレーションが行われ、その鍵を握るコラボ相手がメリッサだ。創作のコラボというよりも、ライヴを含めた表現のコラボのほうが今のブロウにとっては意味合いが大きいのかもしれない。シングル“メイク・イット・アップ”で始まる序盤は、ダーティー・プロジェクターズに通じるひねりの効いたハーモニーやグリッチ・サンプルに彩られ、『Paper~』を思い起こさせるザ・ブロウらしい楽しいキラー・ポップが並ぶ。打って変わってアコースティック・サウンドをサンプリングしブリーピーなシンセがヘヴィに響く後半は、ジェンダーをモチーフにした辛辣で鋭い歌詞が乗り、そこらの宅録インディ・ポップとは全然違う、ライオット・ガール的な才覚が息づいているのを思い出させる。(羽鳥麻美)