恐るべき才能!

フォー・テット『ピンク』
2012年08月22日発売
ALBUM
フォー・テット ピンク
日本独自企画盤で、フォー・テットがアルバム『ゼア・イズ・ラヴ・イン・ユー』以降にヴァイナルのみで出たシングルをコンパイルして、おまけに2曲の新曲を追加した、実にあり難いCD。トム・ヨーク&ブリアルとの共演で注目を集める中、絶好のタイミングのリリースだ。

『ゼア・イズ・ラヴ・イン・ユー』はキュートでポップで遊び心一杯の内容で、ファンタジックで酩酊的な多幸感が強く打ち出され、ワクワクするような楽しさがあった。それに比べるとDJユースを考えたダンス・トラック集である本作はよりミニマルでストイック。骨組みだけのようなリズム・トラックと、最低限の音数ながら色彩感を失わない上モノがじわじわとフロアを熱くしていくのが手に取るようにわかる。ブリアルとの共演の成果はロウの出し方や音の抜き差しにあらわれているが、とりわけ目新しいことをやっていないのに、時代の肝のようなものをしっかり掴んでいるのはさすが。スティーヴ・リードとの共演の成果を活かしたジャズ・ファンク風な楽曲もあり、キエラン・ヘブデンの音楽家としての底力を見せつけられる。見事な「新作」だ。(小野島大)
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