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孤独は命の本来の姿である。約6年半ぶりのフルアルバムとなる本作は、そんな命の本来の姿を深く感じさせる。暗い場所に閉ざされているわけではない。孤独とは、命がひとつあって生まれるものではなく、他の数多の命と出会うからこそ、ひとつの命の、ひとつの孤独がある。そんな命のありのままの姿を本作からは感じる。生と死を内包し、華やかで驚きに満ちているが虚飾はない、命の姿。リアルということではない。「リアルか? フィクションか?」という二元論では語れない。音楽なのだから。“創造”以降のキーボード主体の作曲、シンセサイザーへのフェティシズム、少ない人数でもやり遂げる簡潔さ、国内外のアーティストたちとの貪欲なコラボ……6年半の実験と遊びが、肉と心となり、これほどの静かで孤独な地平にまで昇華されている。プレッシャーや野心すら脱ぎ捨てられたと思える地平に。この先多くの音楽家たちが、この破格の傑作が佇む静かな孤独の地平を見つめながら、自らの創作に向き合うことになるのだろう。(天野史彬)(『ROCKIN'ON JAPAN』2025年7月号より)
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