１年ぶりの新作であり、初のベストアルバムと同発の６曲入りミニアルバム。

同じ事務所に所属し、私生活でも深い交流のあるDOPING PANDAのFurukawaが、昨年末のカウントダウン・ジャパン増刊号の対談で「プロデュースさせろ」と木下理樹に詰め寄っていた希望が叶えられたのか、１曲目の表題曲“ILLMATIC BABY”のプロデュースを担当している。ニューレイヴの匂いのする、不穏でパンキッシュでセクシーなエレクトロで、明らかにこれまでになかったサウンドスケープだ。そのほかの曲は、繊細でカラフルな音色と性急なビートが走る、ダークでダンサブルな曲、聴き手を突き放すザラついたグランジ、ニューオーダー風の80’sなニューウェーブなど――。新たなサウンド・プロダクトを大胆に取り入れ、かなり多彩で幅広い音が聴ける。アートスクールの音には、自らの聖域を守ろうとしているような頑なさがあったが、今作には、その氷を解かし、自由にサウンドデザインをしているような空気がある。しかも、それがどれもかっこよくハマっていて、目からウロコな印象。ここからまた楽しみだ。（小松香里）