通算10作目となるペニーワイズの新作は、まさにバンドの新章を宣言する記念碑的アルバムだ。結成から20年以上経った09年、ヴォーカルのジムが脱退を発表するという危機を乗り越え、バンドは新メンバーのゾリを迎えてツアーを始め、新作を完成させるに至った。メロディック・パンク・ロックにおいて、もはや重鎮と言える地位を確立したこのバンドの新しい「声」となること。その精神的重圧は計り知れないが、ゾリがバンドに持ち込んだ新しいエネルギーがポジティヴに働いていることは1曲目からすぐにわかる。ジムの真似をするでもなく、それでいてペニーワイズのサウンドに合っていて、違和感よりも新鮮な興奮をもたらすキレのあるヴォーカルだ。前作と同じなのはプロデューサーのキャメロン・ウェブで、前作よりもドライでシンプルなサウンドになった印象だが、今作は途中で減速することなくハードな疾走感で駆け抜ける分、余計にアグレッシヴに聞こえる。ドラムの音が最高に弾んでいるのもいい。これだけのキャリアを積んだバンドがこれだけエネルギッシュなアルバムを作るんだから、シーンもきっと活気付くはず。 網田有紀子