ディス・イズ・ザ・ヴァーヴ

The Verve『FORTH〜再生』
The Verve FORTH〜再生 - FORTH〜再生FORTH〜再生
サマーソニックのヴァーヴは、本作からの曲をふたつしかやらなかった。客に気を遣ったわけではあるまい(大方は“ビター・スウィート・シンフォニー”さえ聴ければ満足なのだから)。過去曲が並ぶセットにねじ込める曲は、これしかなかったのだと思う。8分にもおよぶ一大サイケ絵巻“ノイズ・エピック”など、何よりもまず本人たちがやりたくないだろう。コーチェラ以来世界各地のフェスを回ってきた彼らが、このアルバムをリリースした後にまたしっかりツアーをするとは考えにくい。本作の全体像をライブで観る機会は、こないのかもしれない。それが日本では『再生』と名づけられたこのアルバムなのである。これは「作り上げた」のではなく「できてしまった」作品であり、だから制御も再現も不可能だし、過剰なのだ。『FORTH』なんて曖昧なタイトルで呼ばざるを得なかったのもそのせいだ。そしてだからこそ、本作はほかでもないヴァーヴそのものなのである。
リチャードにとって音楽とは、愛とは、「魂の奥底」にあるものであり、「ソネットのようには聴こえない」ものであり、「ノイズ」であり「痛み」であり、「ビタースウィート」なものだった。つねにそうだった。アルバムから聴こえてくる呪術的なグルーヴと偏執狂的なギター、そして無闇と美しいボーカル・ラインは、それを思い出させてくれる。これまで何度も死の淵から這いあがってきたバンド。死にたくても死ねなかったバンド。彼らはこれからも現世をのた打ち回りながら、愛という名のノイズを撒き散らすのだ。 (小川智宏)
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