朝方に見る夢のような、終わることのないまどろみに酔うような、奇妙な快感に襲われるアルバムである。今作から4人組となり、ギター、ベースを揃えた「バンド」のフォーマットで再出発を果たしたメトロノミー。当然音は変わっている。70年代のロックを彷彿とさせるゆったりとしたグルーヴとスケール感のあるサウンドは、デビュー時にはありえなかったものだ。だが、聴けば聴くほど、これはメトロノミーでしかない。本質は驚くほど変わっていないのだ。その本質とは、メトロノミーの根底にある「孤独」と「静けさ」である。夜の終わりの風景を歌った『ナイツ・アウト』と同様に、今作も彼らの音が描き出す風景はどこまでも静かで孤独だ。タイトルの『イングリッシュ・リヴィエラ』とはリゾートのことだ。それも、この作品からイメージするのはオフシーズンでその存在すら忘れ去られたかのようなリゾートの景色である。そこで鳴らされる、クラシックだけれど同時にエキゾチックでもあるロック。 “ホテル・カリフォルニア”である。メトロノミーの寄る辺はどこにもない。彼らの「夜」は続いているどころか、いっそう顕在化しているのだ。(小川智宏)