踏み出せばそこに喜びも悲しみも

Dirty Old Men『GUIDANCE』
Dirty Old Men GUIDANCE
良い歌は、たとえ何百万人に共有されようとも、聴き手の心に一対一で響く。それはつまり、聴き手ひとりひとりの傷口に触れるということでもある。Dirty Old Menがこのメジャー1stアルバムで踏み出した新たなる一歩は、そんな相手の懐に飛び込む勇気と覚悟を感じさせる。自分の作り上げた世界に相手を招き入れる体勢から、身を乗り出し相手の世界へと手を伸ばす積極的姿勢へ。伸ばした手の先には、自分とは異なる喜怒哀楽のツボがいくらでも広がっている。《君の瞳に映る景色は僕と/違ってるんだろうな》(“願い事”)と歌われるように、僕と君は同じではない。だからこそ人は共感を求めるが、しかし喜びだけを共有することはできない。相手の傷口に触れ、悲しみを共有することなしに共感は立ち上がらない。だからあらゆるリアリティの中心には、いつも悲しみがある。悲しみの向こうに喜びが、喜びの彼方に悲しみが滲む彼らの繊細な言葉とメロディ展開は、だからこそ芯の強い普遍性を持っている。バンドとリスナーを結ぶ一対一の強固な関係は、このアルバムを機に大きく広がってゆくはずだ。(井上智公)
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