親方の意地

スレイヤー『血塗ラレタ世界』
2009年10月28日発売
ALBUM
スレイヤー 血塗ラレタ世界
昔、スラッシュ・メタル四天王というのがあったが、メタリカ、アンスラックス、メガデス、スレイヤーの4バンドの中で最も音楽的に一貫しているのはこのスレイヤーだろう。一時は全体的にテンポを落としたアルバムを作ったりもしたが、基本は極度のスピードの2ビートで走って走って突っ走る。その意味では、本来のスラッシュ・メタルのまま生き残っているのはスレイヤーだけと言えるかもしれない。大体、昔から大量虐殺や連続殺人を歌詞に取り上げて物議を醸してきたが、四天王の中でも最も生理的な部分を尊重してきたバンドと言える。だからこそ、この人達の場合、新作の出来は、その時の生理的な鋭さに左右されるのだが、今回はかなりいい。特に90年代以降のヘヴィネスを抑えて、ハードコアとスラッシュ・メタルの区分けが曖昧だった80年代のような音がむちゃくちゃカッコいい。デイヴ・ロンバードのドラムも本当に丸太で叩いているような音がする。ちなみに今作にはアメリカ批判を批判する曲もあるのだが、その内容はともかく、自分の国を否定されたことへの生理的な反応は理解できる。この人達はそれを音にするのだ。(古川琢也)
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