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「贅沢」とは、高い買い物をしてそれを見せびらかすことではない。贅沢とは、形のないものを愛せるということだ。強さと数字を求める世界で、自分の弱さに向き合うことができるということだ。優しいということだ。貧しくとも品性があるということだ。子どもの頃の柔らかな喜びや痛みを忘れずにいられることだ。自分のペースで歩き、誰にも知られない自分だけの孤独を、味わうことができるということだ。NEEが伝える「贅沢」とは、きっとそういうことだ。くぅ(G・Vo)生前最後のツアー「Zone End Pressing Peanuts」で披露された新曲。作詞作曲はくぅ、編曲はNEE。焦燥と無力感を噛みしめる《僕》の独白が、いつしか《君》に語り掛ける言葉に変わる――1曲を通して表れるその変化が、くぅがNEEのフロントマンとして歩んだ人生そのもののようである。内面的な対話と聴き手へのメッセージの重なり。彼らは「弱さ」に、小さき声に、光を当てることで、「ポップスター」という言葉に新たな意味をもたらす。(天野史彬)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年9月号より抜粋)
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