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全7曲、これほど多様な世界を描きながら、それがまるでとっ散らかった印象にならないのが菅原達也(Vo・G)のソングライティングの妙である。軽快すぎるほどの小気味よいポップスに乗せて理不尽でやり場のないストレスを歌い上げる“咲きたい”。ストリングスも取り入れた明るく爽やかなバンドサウンドに乗せ《もう心のストレージ/いっぱいいっぱいです》と限界寸前のメンタルを歌う“ストレージ”。そしてフューチャーハウス風ビートに乗せて主婦の苛立ちを吐き捨てるように歌う“(I am)キッチンドリンカーズハイ”など、今この瞬間にも様々な場所で様々な人が抱いているかもしれない悲しみや寂しさを、このミニアルバムは同時オムニバス的に描き出しているようにも思えてくる。そんな様々な悲哀を、ラスト“It’s a 大愛万国博覧会”がドンと受け止める。《最終日に指差しながら/一緒に笑い合おうぜ》と歌う、カノン的なメロディ運びがとても味わい深い、め組ならではのユニークかつ本気の人生賛歌がここにある。(杉浦美恵)(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年3月号より抜粋)
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