巨星を越えて光輝くアイナ・ジ・エンドという宝石

Kyrie(アイナ・ジ・エンド)『DEBUT』
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ALBUM
Kyrie(アイナ・ジ・エンド) DEBUT
大雨で中断されたROCK IN JAPAN、アイナのステージ。再開後にギター弾き語りで歌われた新曲は、不測の事態に浮足立つ客席の緊張も焦燥も優しく洗い流す血の通った歌だった。

その曲は“名前のない街”として、岩井俊二が22年ぶりに放つ音楽映画『キリエのうた』のためのアルバム『DEBUT』に収録。アイナは主人公Kyrieとして歌を唄う。サウンドプロデュースはもちろん小林武史だが、多くの詞曲がアイナの手によるもの。目の前の愛を素直に受け止められない“前髪上げたくない”の語りにも、《空っぽな夜でも 寂しくない》《また嘘を吐露した 寂しいです》と裏腹な心が吐露された“燃え尽きる月”の叫びにも、Kyrieというフィルターを通すことでアイナ・ジ・エンドという唯一無二の表現者の核が純度高く濾過されている。BiSHを駆け抜け、舞台『ジャニス』で稀代の天才に憑依し、岩井&小林という巨星とタッグを組んでなお色濃く浮かび上がる、アイナの《大丈夫の魔法をかけてあげる》慈愛に満ちた生命力が宝石のように光り輝く作品。(畑雄介)

(『ROCKIN'ON JAPAN』2023年12月号より抜粋)


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