痛みに価値があるなんて思えない人へ

あたらよ『夜明け前』
発売中
DIGITAL
あたらよ 夜明け前
初めて“10月無口な君を忘れる”に触れた時、なんて無防備にロックの痛みを信じているバンドなんだろう、と思った。ひとみ(Vo・G)が切ない情景を描写する語りに始まり、ブリッジに突入する瞬間のゾクリとさせられるようなまーしー(G)のギターリフ、物語と歌心を補完するたけお(B)のベースライン、どっしりとボトムを支えながら表情に彩りをもたらすたなぱい(Dr)のプレイと、奇を衒うことのないサウンドが楽曲の素晴らしさを引き立てていた。本作はバンド初のEPで、これまでのデジタルシングルを含む全7曲を収録。季節の移ろいと心模様を軽やかに重ね合わせる“晴るる”や、この9月に先行リリースされたダイナミックな疾走チューン“祥月”なども素晴らしい。可惜夜(あたらよ)とは万葉集にも出てくる言葉だが、本当に普遍的で洗練された日本語ロックを鳴らすことができるバンドである。痛みもいつかは報われるとか、心の財産になるだとか、そんなお為ごかしはいらない。ただ心が疼いてやまない夜を、メロディとひしゃげた音で埋めろ。それがあなただけの、ロックの時間だ。(小池宏和)

公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

フォローする
音楽WEBメディア rockin’on.com
邦楽誌 ROCKIN’ON JAPAN
洋楽誌 rockin’on