どうにも身動きが取りにくい閉塞した情勢。誰が憎いわけでもないけれど溜まるフラストレーション。そんな中冷静に努めようとするばかりで、自分の内側で燻る怒りや苛立ちに蓋をしていたこと、そしてその感情を失えば生きている実感が消えていくことに気づかされた。Crossfaithの約2年ぶりの新譜『SPECIES EP』は、しっかりと怒り、叫び、全力でこの時代を生きている作品だ。

怒りや苦悩をダイレクトに表現したリリックとシャウトが乗るサウンドは、もちろん全方位的に攻撃モード。いきなりデジタル×ブラストビートで疾走したあとドープなトラップになだれ込む“Digital Parasite”、90年代を彷彿させるアシッドベースにトライバルなリズムが跳ねる“Endorphin”、ゲストボーカルのJin Doggのラップとヘヴィなリフがせめぎ合う“None of Your Business (feat. Jin Dogg)”も超痛快な仕上がり。最新の音も、自身のルーツも、鉄板の得意技も、コラボも、すべて自在に消化して個性を更新しまくっている。攻撃態勢のまま今を生き抜く決意が漲る一枚、聴いているだけで滾る。（後藤寛子）

『ROCKIN'ON JAPAN』2020年7月号より