昨年末、レッチリに電撃復帰して驚かせたジョン・フルシアンテのエレクトロニックなソロ・プロジェクトの3年ぶり3作目。3月にリリースした4曲入りEP『Look Down, See Us』との曲のダブりはない。また年内にもう1枚アルバムが出る予定だそうで、レッチリに戻ろうがなんだろうが一切関係なくマイペースでマニアックかつ個人的な宅録作品を作り続けるありようはいかにもジョンらしい。おそらく復帰の契約上の条件にもなっているのだろう。
本作ではジョンはギターを一切弾いていない。歌ももちろんうたっていない。ビンテージなアナログ・シンセサイザーとドラム・マシーンを操りオウテカやエイフェックス・ツイン、スクエアプッシャーなどに通じるエレクトロニカ〜IDMを徹底して展開。聴いても聴いてもアシッドな電子音しか聞こえてこない。メロディはあるがそれを聞かせることが主眼ではないだろう。過去作やEPではリズムやアレンジなどで変化をつけ、曲によってはギターを弾いたりボイス・サンプルをかませたりしていたが、本作ではストイックと言えるほどエレクトロニック・オンリーなサウンドなので、レッチリしか聴かない人にも、シンガー・ソングライターとしてのジョンにしか興味のない人にも、まったく不向きだろう。
とはいえ、これはアーティストの持ち味でもあると思うが、そのような作品であっても、オウテカのように人を寄せ付けないようなストイックさとか冷たさはなく、エイフェックスのような尋常ならざる狂気のようなものも感じられず、どこか緩くて温かみがある。別な言い方をすると、エレクトロニカとしては徹底しきれておらず完成度はそんなに高くない。だがそのユルさが味であり人間的でもある。これはそんな作品だ。 (小野島大)
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