2017年にデビュー20周年の節目を迎え、音楽的変遷の流れにもひとつの区切りをつけるかのようにベスト・アルバムをリリースしているフィーダー。本作はそれを経ての、通算10枚目のオリジナル作品にあたる。
そして本作が示しているのは、3つ目のディケイドに突入しても彼らの音楽の根幹たる部分は揺らいでいない、という事実だ。これまでの道程のなかで、テクノロジーとの付き合い方やノイズのまとい方を作品ごとに緩やかに変え続けてきた彼らではあるが、アメリカ産オルタナティブ・ロックと英国的センスの融合とでもいうべき独特の味わい、パワー感と抒情性を併せ持った、あくまで楽曲重視型の姿勢は少しも変わっていない。
そうなってくると、やはりどれだけ良い曲が揃っているかが今作の求心力を決めることになってくるわけだが、その点においてもスキはない。今回はフロントマンのグラント・ニコラスがアコースティック・ギターで作った楽曲群が主体になっており、彼自身、今作においての曲作りがとてもナチュラルなものだったと語っているが、あざとく狙わずともキャッチーなアンセムを生み出すことのできる普遍的な作曲センスこそが、彼の最大の武器だ。ライブの定番になりそうな疾走感あふれる曲でも、憂いのあるメロディと歌声を伴った曲でも、その効力が十二分に発揮されている。日本語のフレーズが配された“KYOTO”も、9月の来日公演では大合唱になることだろう。
前作に至るまでのオリジナル・アルバムのうち6枚をUKチャートのトップ10に送り込んでいるヒットメイカーでもある彼ら。正直なところ斬新さや驚きは感じられない。が、この味わい深さには確実に安心感以上のものがある。まさに信頼のブランド、である。 (増田勇一)
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