ケイト・ブッシュの全作品が初リマスター。リマスタリング作業はケイト自身と、ピンク・フロイドの仕事でも知られているジェームス・ガスリーの手で行なわれた。CDのボックス・パート1には、衝撃のデビュー作『天使と小悪魔』から、90年代の唯一のアルバム『レッド・シューズ』まで収録。個人的な話をすれば、最初の4枚はアナログ盤からカセット・テープに録音したものを、文字通り擦り切れるまで聴き込み、その音が脳内に染み付いていると言ってもいい。本作を聴くと、その少しくぐもった音像が、ぱーっとクリアになる感覚があって軽く目眩を覚えるほど。当時は「ファーストに比べて『ライオンハート』は少し落ちる」みたいな評価も聞いて、確かにそうかなと思ってたりもしたが、聴き直してみたらやっぱり素晴らしかったし、『ドリーミング』も「大傑作『魔物語』の次ということで、ちょっと力が入りすぎた」なんてことを言われてた記憶もあるけれど、フェアライト・シンセを多用して72トラックもの多重録音で作り上げたサウンドは、詰め込みすぎどころか、情報過多の時代を通過した現在の感覚では、なんの違和感もなくスムーズに耳に馴染む。
大ヒットした『愛のかたち』と続く『センシュアル・ワールド』は、当時の最先端だったデジタルのべったりした音色が一時期かなり古臭く感じられたものの、今回のリマスター版ではそんなに気にならない。あまり聴かずにきた『レッド・シューズ』にも再発見がある。
ボックス・パート2の方に割り振られたオリジナル・アルバムは21世紀以降の作品となるので、さすがに刺激の度合いはそんなに高くないが、こちらにはライブ作品の『ビフォア・ザ・ドーン』に加え、CD4枚分のレア・トラック集が付き、ファンだったら見逃せない。(鈴木喜之)
『ケイト・ブッシュ・リマスタード・パート1/パート2』の詳細はWarner Music Japanの公式サイトよりご確認ください。
ケイト・ブッシュ『ケイト・ブッシュ・リマスタード・パート1/パート2』のディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』1月号に掲載中です。
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