歌の時代を告げる傑作

エド・シーラン『÷( ディバイド)』
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ALBUM
エド・シーラン ÷( ディバイド)
<言葉が紙コップからあふれ出す、やまない雨のように>とはジョン・レノンの傑作“アクロス・ザ・ユニヴァース”の歌い出しだが、エド・シーランのこの新作を聴き終わって、やまない雨のように、良い曲が紙コップからキラキラとこぼれ落ちてくる光景が浮かんだ。なんという才能なんだろう。

ファレル、リック・ルービンらと渡り合った前作『×』から3年、今回はベニー・ブランコやマイク・エリゾンド、スノウ・パトロールのジョニー・マクデイド等と共に佳曲を珠玉のトラックへと磨き上げてきたが、不思議なエコー感を持った1曲目の“イレイサー”に始まり全16曲、一気に聴き終えた充足感の大きさは最近ではあまり記憶にないほど。先行発売された“キャッスル・オン・ザ・ヒル”、日本にやってきてテレビでも披露していた“シェイプ・オブ・ユー”のいずれもとてもチャーミングだが、とくに“キャッスル・オン・ザ・ヒル”のように幼い頃の体験を素直に楽曲化しヴィヴィッドに歌い込めること自体が才能そのものだというのがよくわかるし、そこらを洗練させ、熟成させるのが素晴らしい。

じっくりと聴かせる“パーフェクト”、パンクやファンクのテイストを巧みに隠し味としている“ゴールウェイ・ガール”、ピアノ一台でじっくりと物語を広げていく“スーパーマーケット・フラワーズ”、アイリッシュ・テイストのメロディが耳に残る“ナンシー・マリガン”などが今は印象深いが、それらと同レヴェルの楽曲がアルバムを満たしている。<歌>が求められる時代を正面から受け止めきった傑作だ。(大鷹俊一)
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