魂の再生のドラマ

ビョーク『ヴァルニキュラ:ライヴ』
ビョーク ヴァルニキュラ:ライヴ
2015年3月、NYを皮切りにスタートしたものの、わずか16公演で中断してしまった『ヴァルニキュラ』ツアーのライヴ盤。CD/LP/配信のみのリリースなのは、単に満足すべき映像が残されていないということかもしれないが、ビョークにとって、まずは音だけの作品としてリリースする必要があったのだろう。それは当然、制作進行中の『ヴァルニキュラ』全曲VR化プロジェクトの完成が前提となる。家族の崩壊という悲劇からの魂の治癒と再生を描いたドラマが『ヴァルニキュラ』ツアーの核心である。生楽器と電子楽器が絶妙に折り重なった精緻なサウンド・プロダクションの厚みのある完成度は、録音の良さも相まって、ライヴとは思えないほど凄まじい。ビョークの感情のうねりが息苦しいほどの密度で立ちこめているが、それでいてリスナーが想像力の翼を広げるような大きなスペースが残されている。VRが必然的に受け手の全感覚に作用するような「体験」とならざるをえなくなるのに対して、これは聴覚という一点から突破して受け手の全感覚を解放し、魂の再生のドラマを体感させる。素晴らしいの一言だ。(小野島大)
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