注目すべきは、新世代ジャズ・ミュージシャンを起用した、スリリングで覚醒感に溢れた未知のサウンド。不気味で不穏で不安定な、潜在意識を揺るがす正真正銘のアートであり、同時に何度も聴きたくなるポップさがある。時代の空気を独自の手法でマッピングしたリアルな音像は、若い世代のリスナーにも刺激的に響くはずだ。
ボブ・ディランやブルース・スプリングスティーン、U2など声なき声を歌に編み、時代を具現化する大御所は今なお第一線で多く活躍するが、こんなアートな音像を発明する人は稀で、そこにこそボウイの底知れぬ才能と面白さがある。
聴いていると、宇宙からボウイに見守られているような奇妙な錯覚に陥るが、ラストの“アイ・キャント・ギヴ・エヴリシング・アウェイ”ではその距離がぐっと近づき、《これが私の送り続けたメッセージだ》《私は全てを与えることはできない》という(救世主ジギーや宇宙飛行士トム少佐のオマージュとも受け取れる)歌が高揚感に溢れるメロディにのって響く。病んだ星=地球への子守歌のようなアルバムだ。 (井上貴子)
