過去と虚構は現実の背骨

ウソツキ『新木場発、銀河鉄道は行く。』
2015年01月21日発売
MINI ALBUM
ウソツキ 新木場発、銀河鉄道は行く。
ウソツキの本領発揮とも言うべき瑞々しいメロディ、コードの繊細な響きやアルペジオを効果的に盛り込んだ透明感溢れるサウンドを全5曲でじっくり届ける2ndミニアルバム。現実の描写の中にファンタジー的なエッセンスやノスタルジックな要素を粋に添加する作風がウソツキのかけがえのない魅力だと、今作を聴いて改めて強く実感した。例えば、“新木場発、銀河鉄道”がとても良い。新木場と下北沢との間が「光の速さで二時間くらい」だという銀河鉄道について描きながら、もどかしさも香り豊かなスパイスである恋愛模様の機微を鮮やかに映し出している。また、甘酸っぱい思い出にひたすら浸り切った末、ふと見開いた眼前に広がる現実が美しい“綿飴とりんご飴”も印象的な楽曲だ。奥行き深い物語を噛み締めさせてくれる。肉体は紛れもなく今この場所にいるあなたも私も、意識や想いは絶えず過去や未来、空想上の何処かとの間を忙しく行き来しながら生きている。実は虚構や記憶に少なからず裏打ちされながら存在している現実、現在をシャープに抉るウソツキは、とても生々しいバンドだと思う。(田中大)
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