いよいよ今週末開催のフジロック、今年のザ・キュアーが絶対に必見である理由。予習すべき作品は? セットリストはどうなる?

いよいよ今週末開催のフジロック、今年のザ・キュアーが絶対に必見である理由。予習すべき作品は? セットリストはどうなる?

フジロックの開催を目前に控え、改めて念を押しておきたいことは、今年のザ・キュアーは絶対に、絶対に、必見ですよ!!ということ。今年ついにロックの殿堂入りも果たし、今なおインディ/オルタナティヴ・シーンに絶大な影響を与えながら世界中のナードに寄り添い続ける神として君臨するキュアーだが、いかんせん前回のフジ(2013年)で全36曲&終演時刻24時超えというフジロック史に残る長尺ライブをぶちかましてしまったがゆえ、キュアーをよく知らない若いオーディエンスからしたら無駄にハードルが上がってしまっているのも否めない。

でも、今回の彼らのステージは前回と比較してもっとずっと間口が広いものになるはずだ。それに何よりも、「きたる新作がキュアーのラスト・アルバムになるだろう」というロジャー・オドネル(Key)の発言もあるように、もしかしたらこれが最後のキュアー体験のチャンスとなる可能すらあるのだ。


ちなみに今年のタイムテーブルはフェス3日目の7月28日(日)21時〜23時15分で、トータルタイムは2時間15分の予定。2013年は21時半開演の24時終演予定だったが、最終的には前述した通り3時間近くやったので今年も延びる可能性はなきにしもあらず。また、他日のヘッドライナーのケミカル・ブラザーズシーアに比べればダントツで長尺だが、それでもキュアー比で言ったらかなりコンパクトにまとめられたステージになるはずだ。


今年は歴史的名盤『ディスインテグレーション』(1989年)から30年の節目となるアニバーサリー・イヤーで、5月にはアニバーサリー・ツアーも行っている。6月からのフェス・ツアーでも、『ディスインテグレーション』のナンバーが連日最多で選曲されているようだ。というわけで、フジ直前に復習しておくべきアルバムを一枚あげるとしたら同作だろう。“Pictures Of You”、“Lovesong”、“Plainsong”など名曲目白押しです。


『ディスインテグレーション』がキュアーの最高傑作と言っても過言ではない理由は、本作ほど彼らの二面性を高次元で体現したアルバムは他に類を見ないからだ。ダークでゴシック、耽美なペシミズムに耽溺しながら哀しみや絶望を歌う暗黒面と、ポップでスウィート、皮肉と自虐によろよろ引っ張られながらも、それでもささやかな幸せを明日に願う光明面。30年前の同作を聴けばその陰陽とハッピー・サッドの絶妙なバランスにこそキュアーの真髄があると瞬時に理解できるはず。

ハッピー・サッドといえば、80年代を舞台に繰り広げられた青春音楽映画の傑作『シング・ストリート 未来へのうた』では、主人公の兄が彼に「これがハッピー・サッドっていう気持ちだ」とキュアーの“In Between Days”を聴かせるという最高に胸熱なシーンがあったけれど、もちろんこの曲もセットリスト入りがほぼ当確している。


ちなみにキュアーは年内リリースが噂されている新作をうかがわせる未発表曲を、現時点では披露していない。あくまで80年代、90年代のクラシック・チューンを中核としたセットになっていて、曲数も20曲台後半とかなり絞り込まれている。ゆえにデヴィッド・ボウイとの仕事でも知られるリーヴス・ガブレルスとロバート・スミスが真剣でやり合うようなスリリングなギター・インプロや、ゴス、インダストリアルのストイックな構築といった外殻要素はかなり削ぎ落とされ、あくまで曲単位のメリハリで進行していくセットになるだろう。メリハリといえば、6月のグラストンベリーでは『クロウ/飛翔伝説』のサントラでも強烈なインパクトを放っていた“Burn”をやっている。ご覧の通り、ライブ・バージョンが死ぬほどかっこいいナンバーだ。


キュアーのようにキャリア40年で数えきれない名曲・ヒット曲を世に送り出してきたバンドが2時間15分のフェス・セットをやると、名曲・ヒット曲ですらセットリストから容赦無く脱落していく、なかなかに悩ましい超濃密エッセンシャルな内容になる。でもだからこそ、2時間15分のどこかの時間帯だけを断片的に参加したとしても、その時々で充実のキュアー体験が保証されるはず。

なお、今回はタイムテーブル的に23時ちょい前からアンコール・タイムに入ることが予想される。アンコールでは間違いなく“Boys Don’t Cry”をやるし、日曜日だけどもちろん“Friday I’m in Love”もやるし、“Close To Me”もやるだろう。つまり、仮にFIELD OF HEAVENでクルアンビンを最後まで観たとしても、それからの移動で十分にこの至高のフィナーレに間に合うということ! 2019年のフジロックのクライマックスは是非とも彼らと共に迎えてください!(粉川しの)

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