ジャネール・モネイの単独公演を観て受け取ったポジティブなメッセージ。自由で親密で祝祭感全開のパフォーマンスは、フジロックでも見逃せない!
2019.07.25 18:25
世界中の女性、黒人、LGBTQI、労働者階級、障害を持つ人、移民たちの権利のために戦い続けなければいけない。それらを抑圧する権力に立ち向かわなければ――。
彼女のスピーチは明確なメッセージとして力強く投げかけられた。しかしそれは脳天をガツンと突くようなアジテーションではなく、ハートごと包み込んで自らを縛っているしがらみを温かく解きほぐしてくれるようなやさしさと愛にあふれていた。だからこそ、もっと自分を解放して動き出そうという勇気と力が湧いてくるのだ。なんてポジティブなライブだったのだろう。
(※この後のテキストでは演奏内容についても触れていくので、予備知識なしでフジロックでのライブを堪能したい人はご注意ください)
Zepp DiverCityという、親密な規模感のライブハウスでジャネール・モネイの破格のエンターテイメントを体感できたことは、本当に幸福だった。“Q.U.E.E.N.”から“Electric Lady”と続く強烈なグルーヴが女性のクールな強さを感じさせ、“I Got The Juice”では、ジャネール自身が観客の中から何人かを指差しステージに上げると、それぞれが思い思いのダンスを披露して多様性と自由とをごくナチュラルに感じさせてくれたり、“Pynk”ではもちろんあの衣装で登場し、ダンサーたちとともに女性の肉体&精神の解放をとても楽しくキュートに表現してくれた。冒頭に挙げたジャネールの言葉が意味するものは、すべてのライブパフォーマンスにその意志が貫かれていて、だからこそそれを受け取る観客一人ひとりが「私も動き出せる」というポジティブなメッセージとして、その言葉を受け取ることができたのだ。
歌も演奏もダンスも演出も、すべてが素晴らしかった。ともにステージに立つプレイヤーたちの演奏力の高さとバンドが放つグルーヴも強力で、“Make Me Feel”でジャネール自身が弾くギターや“Primetime”から“Purple Rain”のギターソロを引用するアレンジなど、プリンスへのリスペクトも随所に強く感じられて、その豊潤でしなやかなファンクネスがこうして受け継がれているのを実感できたことも、とても嬉しい。何よりその歌声の素晴らしさに終始圧倒されっぱなしだった。緻密に計算されたステージングでありながら、生身のジャネール・モネイ、その人間らしさを、その体温を直接感じ取るかのような時間だった。
アンコールの“Come Alive”では、演奏の途中でフロアの観客を全員座らせ、自身もそこに降り立つと、モッシュピットの奥まで歩きながら「しーーーっ」と人差し指を唇に当てて笑ったり、皆にアットホームなシンガロングを促したり、会場をまるでジャネールと楽しむプライベートなパーティーみたいな空間に変えてしまった。これほど祝祭感全開で、自由で、親密なライブになるとは。ジャネールも私たちと同じ場所に立ってこれからもともに戦い続けるという、そんな意思表明のようにも感じられた。「勇気をもらった」などと安易に言葉にはしたくないけれど、ジャネールのライブは愛にあふれていて、ほんとに自分自身を解放して動き出す勇気をもらった気がする。
この素晴らしいパフォーマンスが明日にはフジロックのGREEN STAGEでまた観られると思うと心が踊る。今度は広大なあの場所で、「We must keep fighting!」のメッセージがよりオープンに、より多くの人の心に届くのだ。最高に気持ちよくてハッピーで自由なライブになるはずだ。(杉浦美恵)