レディー・ガガの初主演映画『アリー/ スター誕生』が傑作と大評判! ミュージシャンが本気で芝居している映画をまとめてみました

レディー・ガガの初主演映画『アリー/ スター誕生』が傑作と大評判! ミュージシャンが本気で芝居している映画をまとめてみました

12月21日の日本公開を前に、すでに大きな話題を呼んでいるのがレディー・ガガ主演の映画『アリー/ スター誕生』だ。

https://youtu.be/6jLvuQ8NYAM

ガガの初主演作であると共にブラッドリー・クーパーの初監督作でもある本作は、1937年の『スタア誕生』の4度目のリメイク作となっている。ただし、舞台がオリジナル版の映画業界から音楽業界に置き換わっているという点で、直接的にベンチマークしたのは1976年のバーブラ・ストライサンド版『スター誕生』ということになるだろう。


ウエイトレスをしながら歌手になることを夢見るアリーが、世界的ロックスターのジャクソン(ブラッドリー・クーパー)と出会い、スターダムを駆け上っていくという本作のプロットは、まさにガガ自身の半生を投影した内容で、単なる「ハマり役」を超えて彼女のために誂えられたようなキャラクターを生きたガガの熱演は大絶賛されており、ミュージシャンの映画主演作としては破格の成功を収めることになりそうだ。

ちなみにジャクソン役はエディ・ヴェダーをモデルにしているというが、クーパーがこんなに歌がうまいとは驚き! で、この点でも作品のリアリティを生んでいる。


『アリー/ スター誕生』に関するあれこれについては、中村明美さんのブログもチェックしてください。

https://rockinon.com/blog/nakamura/179991
https://rockinon.com/blog/nakamura/180447

ミュージシャンが役者にチャレンジした例は、これまでにも成功作、失敗作、怪作を問わず無数に存在する。ここではドキュメンタリーやライブ・フィルム以外の商業作品におけるミュージシャンの役者業を、いくつかご紹介することにしよう。

今回のレディー・ガガの『アリー/ スター誕生』から、ビヨンセが出演した『ドリームガールズ』(2006)を連想した人も多かったのではないか。シュープリームスの実話をもとにモータウンの黄金期を描いた本作で、ビヨンセはダイアナ・ロスをモデルとしたと思しきキャラクターであるディーナを演じている。ザ・ドリームズを去り、ソロとして独り立ちするディーナは、デスティニーズ・チャイルド解散後のビヨンセ自身のキャリアの歩みと重なるものも。


『スター誕生』にガガの半生が投影できるという意味では、自伝的要素が濃いエミネムの『8 Mile』(2002)、プリンスの『プリンス/パープル・レイン』(1984)も忘れてはならないミュージシャン×役者の古典だ。



ガガにとってロール・モデルであるマドンナは80年代から積極的に映画業界に進出しようとしてきたアーティストで、なにぶん出演作が多いので駄作や謎作も多々ある。そんな中でもアカデミー歌曲賞を受賞した『エビータ』(1996)で演じたエバ・ペロンは当たり役と呼んでもいいだろう。


『スター誕生』のガガや前述のビヨンセやエミネムのように、ミュージシャン、ポップ・スターとしての自身のプロフィールを反映した役柄を演じてきたアーティストに対して、ミュージシャンと役者のキャリアを明確に区別し、もっとカジュアルに「普通」の役にトライするアーティストもいる。

その代表格がジャスティン・ティンバーレイクだ。主演から脇役、ラブコメからヒューマンドラマまで様々な役を演じこなす彼は、スクリーン上にポップ・スターのペルソナを全く持ち込まない人なのだ。『ソーシャル・ネットワーク』(2010)ではNapster創設者ショーン・パーカーを演じていました。

https://youtu.be/k5fJmkv02is

『オーシャンズ8』で天才ハッカーを演じたリアーナや、『ダンケルク』で第二次大戦中の兵士を演じ、アイドル・オーラを完全に消滅させて臨んだハリー・スタイルズなどもこのタイプか。

https://youtu.be/m1KUUsYp3Fc
https://youtu.be/SIWGVzRbxsw

そんな近年のミュージシャン×役者の「普通」化の対極だったのが、『キングスマン:ゴールデン・サークル』(2017)のエルトン・ジョンだろう。彼は「エルトン・ジョン」本人として登場するのだが、そのメタフィクションな役回りを見事にこなし、殺戮シーンの只中で自身のキャラクターをセルフ拡大解釈しながら嬉々として演じている御大は、まさに怪演と呼ぶべき存在感だった。

https://youtu.be/y5BlasoyCzU

ちなみに『ゴールデンサークル』で主演のエグジーを演じたタロン・エガートンが、エルトン・ジョンのファンタジー伝記映画『Rocketman』でエルトンを演じているという縁も。

https://youtu.be/mpOGT3GTO84

また、ミュージシャンが役者として出演した映画には、監督がミュージシャンにインスパイアされて作品や役柄を生み出していったパターンも多い。

例えば『ミステリー・トレイン』にジョー・ストラマー、『ダウン・バイ・ロー』にトム・ウェイツを配役したジム・ジャームッシュは、自身の作品作りと音楽&ミュージシャンが密接に結びついている監督のひとりだ。特にイギー・ポップ、トム・ウェイツ、ジャック・ホワイト、メグ・ホワイトらが出演した『コーヒー&シガレッツ』(2003)は最たるもので、イギー・ポップとトム・ウェイツがダベりながら「お前の曲は店のジュークボックスに入ってない」なんて言い合うシーンは最高。

https://youtu.be/mM6Mpn0-eyQ

また、1960年代のスウィンギン・ロンドンのムードを切り取った傑作として名高い『パフォーマンス/青春の罠』(1970)を撮ったニコラス・ローグも、ロック・スターのアイコニックな魅力を銀幕に焼き付けた監督の一人だ。『パフォーマンス』は言うまでもなくミック・ジャガーの初映画出演作。“Memo from Turner”を歌うシーンはもちろんのこと、蛍光灯? 蛍光管? を持って妖艶に踊るミックは必見。

https://youtu.be/mggYe5E5laU

ニコラス・ローグと言えば、デヴィッド・ボウイの『地球に落ちてきた男』(1976)も外せない。若き日のデヴィッド・ボウイとミック・ジャガーの禍々しいまでの美しさを捉えたローグは、ミュージシャン、ロック・スターが「演じる」ことの意義に尽くした人だったと言えるかも。

https://youtu.be/KUtJ5FnwfCk

そして、ミュージシャンの役者業を語る上で絶対に外せないのがビョークの主演作『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(2000)だ。観終わった後しばらくは立ち直れないほどのバッドエンドに加え、昨今の「me too」の流れの中でビョークが本作の監督ラース・フォン・トリアーをパワハラで告発したりと、いくつもの意味で気軽に観ることを躊躇う作品ではある。しかし、本作のセルマは間違いなくビョークでなくては演じられなかった役であり、むしろフォン・トリアーが彼女に求めたものが芝居とリアルの境界を失ったビョークの命の鼓動そのものであったという意味で、唯一無二なのだ。セルマが“I've Seen It All”を歌うシーンは、ミュージシャン×役者史に残る数分間だったと思う。(粉川しの)

https://youtu.be/53vr9EiOH7g



『アリー/ スター誕生』の映画情報は以下。

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