洋楽のマニアックなアーティストから日本のアイドルまで、サマーソニックはその多様なジャンルを飲み込むエネルギーが魅力となっている。今年はより一層その傾向が強まり、参加者それぞれが自分のタイム・テーブルを作ることで、自分だけのサマソニのイメージが出来上がる。僕の場合はいくぶん洋楽オタクなサマソニを楽しんだことになるのかもしれない。
若い才能で一番印象に残ったのはジェイク・バグ。まだ10代のイギリス出身のシンガー・ソングライターである。現在のロンドンに住む労働者階級の若者の生きにくさ、閉塞感をリアルな、そして文学性の高い歌詞で歌い、いきなりデビュー・アルバムがチャートの1位になった驚異の新人である。2万人以上が入るマウンテン・ステージに、まるで小さなライヴハウスで演るような地味なたたずまいで登場し、圧倒的な存在感でそこにいた人達を魅了してしまった。どの曲もすでに古典のような風格を持ち、歌の説得力も10代の若者とは思えないものがあった。
ベテランでは1日目のマリン・ステージのトリを務めたメタリカが素晴らしかった。新旧の代表曲を次々と演奏し、そのプレイの絶対的エネルギーの巨大さで、ロック・バンドとしての別格感をアピールした。彼らのことをよく知らない人でも、その場に立ち会えば何か凄いものを体験していると感じることができるパフォーマンスだった。
他に灼熱のマリン・ステージという過酷な状況でも歌の力で空気を変えてしまったジョン・レジェンド、ハイパーなダンスと歌で独自の世界を展開したM・I・A、今年のサマソニも充実していた。
10、11日 QVCマリンフィールド、幕張メッセ
(2013年8月27日 日本経済新聞夕刊掲載)
日経ライブレポート 「サマーソニック2013」
2013.08.29 14:39