ロックが時代の全体性を獲得するというのは、たとえばビートルズの「サージェント・ペッパー」が、あるいはツェッペリンのセカンドが、ニルヴァーナの「ネヴァーマインド」が時代の空気全体を象徴しつつ巨大セールスを実現するようなことだ。長い間、ロックはポップ・ミュージックのなかで、そうした役割を担う一種特権的なポジションにいた。しかし最近はそのポジションをヒップホップやポップ・シンガーに委譲することが多くなってきている。
徐々にロックが時代のローカル言語になっていくのは残念だが、認めざるを得ない流れだと思う。
だからといってロックが表現として衰弱して来ているわけではなく、優れた作品は作られ続けている。
ヴァンパイア・ウイークエンドの新作は、そんな流れのなかで、優れたロック・アルバムが時代の全体性を獲得することができることを証明してみせた作品だった。
ほぼ同時期に発表されたザ・ナショナルの新作もそうした力を持つ作品だ。ヴァンパイア・ウイークエンドと比較するといくぶんアートなベクトルが強いが、とても力のある作品だ。今日のワールド・ロック・ナウで紹介したい。
ヴァンパイア・ウイークエンドの新作が時代の全体性を獲得しているということはどういうことなのか。そしてザ・ナショナルの新作も同じように時代と向き合っていることを今日の番組で紹介したい。
2019.06.02 12:31