日経ライブレポート 「フジロックフェスティバル」

今年のフジロックは本当に豪華だった。グラミー受賞後、名実共にロック・シーンのトップに君臨するアーケイド・ファイア。再結成がひとつの事件であり、全世界のフェスで圧倒的パフォーマンスと破格のギャラが話題のアウトキャスト。17歳にしてグラミー2部門受賞の快挙を果たしたロード。イギリス勢もソロ初となるデーモン・アルバーンやフランツ・フェルディナンドなど多彩な顔ぶれが参加した。その他新人からベテランまで、ロックからR&B、そしてエレクトロ・ミュージックまで、苗場で3日間を過ごしていると2014年のポップ・ミュージックの重要なライヴのほとんどを体験できるのでは、という気さえしてくる。

その中でも僕が一番楽しみにしていたのがアーケイド・ファイア。これまでのロックのスタイルにこだわらず、多様な音楽スタイルを自分達の中に取り込み、バンドのスタイルも固定せず、最近は大人数のビッグ・バンド風の編成でライヴしている。これはリーダーのウィン・バトラーが妻の両親の故郷であるハイチで演奏した時、自分達が有名なロック・バンドであるという特権が有効でなかった体験が大きく影響している。そこで彼は、ロックの特権が通用しない国でも、しっかり人の心を動かす普遍的なポップ・ミュージックの在り方を模索しようと最新作に取り組んだ。その成果が見事に反映された素晴らしいライヴだった。

彼らに限らず、多くの優れたロック・アーティストが、ロックのスタイルとしての融解と純化というテーマと向き合っている事が感じられる3日間だった。

7月25~27日、新潟県・苗場スキー場。
(2014年8月13日 日本経済新聞夕刊掲載)
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