最新作『NEVER ENOUGH』(25年)がグラミー受賞という快挙を達成し、新世代ハードコアバンドとして、名実ともに世界を牽引するアーティストとなったターンスタイル。そんな彼らがハードコアの聖地/川崎クラブチッタで行った今回の単独公演は、はじめから終わりまで、歓喜と熱狂のカオスに包まれるうち幕を閉じた。観客がステージを埋め尽くし、音楽と人、すべてが渾然一体となる感動的なフィナーレを目の当たりにし、ターンスタイルがなぜ今シーンの最前線を疾走しているのか、その理由がすべて証明された一夜となった――
ショー当日、サポートアクトに抜擢されたTRUE FIGHT、SANDが音量も熱量もぶち抜いた後のフロアでは登場を待ちきれないオーディエンスの歓声がそこかしこで上がっている。ターンスタイルといえば、4月にコーチェラ・フェスティバルで披露された圧巻のステージも記憶に新しいが、当然、今の彼らをキャパシティ1,300人の川崎クラブチッタで目撃できることはほとんど奇跡に近い。一夜限りの特別なギグに、フロアはかつてないほどの気迫に満ちていた。20時10分。ほぼオンタイムで照明が落ちるや、絶叫とも歓声ともつかぬ声が湧き上がる。最新作のタイトル曲“NEVER ENOUGH”の流麗なイントロが暗闇に響くなか、ついに4人がステージに登場した。フロントに立つブレンダンが突き刺すようにクリーンな歌声を放つと、同時にオーディエンスも盛大なシンガロングで応える。頭上高く掲げられたスタンドマイクに観客の歌声が集まり、熱気がさらに一段階上昇した瞬間、ドラマーダニエルの合図でフロアは一気に爆発。事前のアナウンスなどどこ吹く風、ヘッズたちはステージ上を駆け回り、サーフし、会場全体をモッシュピットに変えてバンドとシーンへのリスペクトを身をもって示す。
歓喜のあまり狂騒状態に陥ったフロアを前にしても、バンドメンバーの演奏はブレず、硬派そのもの。パット(G)、そしてメグ(G)の鳴らすギターリフは鋭く、重なり合うと音の厚みも密度も高い。上手と下手を自由に行き来し、超ファットなベースで観客を煽るのはフランツ。何よりバンドの屋台骨として強力な馬力でリズムを刻むダニエルも背後から存在感を放つ。いきなりトップスピードで始まったステージにあっけに取られている間に、ハードアンセム”T.L.C(TURNSTILE LOVE CONNECTION)”に突入する。前曲の質感とは打って変わってアクセル全開のドライヴ感で展開する同曲はターンスタイルが持つハードコアバンドとしての初期衝動がほとばしる1曲だ。その後も”I CARE”、”DULL”、”Real Thing”〜と新旧織り交ぜてのセットリストが続く。文字通り垣根がなくなった状態で観客とバンドが一体化したフロアの光景を目の当たりにすると、これこそがターンスタイルが試みてきたミクスチャー文化の一つの完成形なのだと圧倒される。「Thank you for being here, Dance withe me」と手招きするブレンダンの言葉には、フロアにいるすべての人間を肯定するハードコアのスピリットが見て取れた。
中盤に差し掛かり披露されたのは初期作からの“Keep It Moving”、そしてアカペラから始まる“UNDERWATER BOI”。「Show me what you want!」の一声で、オーディエンスのボルテージはますます上昇。ラスト曲“LOOK OUT FOR ME”のアウトロでフロアはお祭り状態に。輝くミラーボールのもと、肩書、ジャンル、すべての境界を超えて恍惚のなか踊る人々がどこまでも眩しかった。終了後1mmも鳴り止む気配のない「TURNSTILE」コールに応え、メンバーは再びステージへ。アンコールは”MYSTERY”、”BLACK OUT”、”BIRDS”と怒涛のキラーチューンになだれ込む。オーディエンスがステージをいっぱいに埋め尽くし、踊り、歌う圧巻のフィナーレ。一人残らず全員がこのダンスフロアの一部であり、主役だった。間違いなくこの日のハイライトと言える。激しくも親密なエネルギーに満ちたこの日のパフォーマンスには、彼らが今まさに時代に呼ばれている理由が詰まっていた。必ずまた戻ってきてくれることを願わずにはいられない。(土屋聡子)---セットリスト---01 NEVER ENOUGH
02 T.L.C. (TURNSTILE LOVE CONNECTION)
03 ENDLESS
04 I CARE
05 DULL
06 DON'T PLAY
07 Real Thing
08 Drop
09 LIGHT DESIGN
10 Come Back for More (Intro) ~ Fazed Out
11 Keep It Moving
12 Pushing Me Away
13 SOLE
14 UNDERWATER BOI
15 HOLIDAY
16 LOOK OUT FOR ME[Encore]
17 MYSTERY
18 BLACKOUT
19 BIRDS