USインディを代表するSSWフィービー・ブリジャーズが、6年ぶりのソロ3作目『ロスト・ウィークエンド』を8月14日についにリリースする。2nd『パニッシャー』以降はボーイジーニアスで衝撃を与え、ポール・マッカートニー、テイラー・スウィフトらとも共演。2024年、グラミー最多3部門を受賞したが、「公の生活から離れたかった」と24、25年は制作に専念した。
満を持して完成した今作は、才能をさらに研ぎ澄まし、表現を前進させたキャリアの最高到達点だ。2022年に亡くなった父への思いと、運命の相手との恋という激しい感情が渦巻く。彼女自身とジャック・アントノフらがプロデュースし、アレックス・Gも参加。ギターとシンセサイザーを軸に、彼女曰くアンビエントを取り入れたサウンドは予測不可能に展開し、ボン・イヴェールやシガー・ロスらを想起させながら、壮大で複雑、かつ親密な彼女自身の音楽へと昇華している。
代表曲“Kyoto”で語られた通り、彼女と父の関係は複雑だった。“Still Standing”では幼少期の痛ましい記憶を告白し、“Lost Weekend (Reprise)”では、謝られなくても許すことを父から学んだと振り返る。愛憎を美化せず、それでも自分の中に生き続ける存在として父を見つめるところに、本作の切実さがある。
一方、パートナーのボー・バーナムも参加した本作では、新たな愛の喜びと、それを失う恐怖が爆発する。プロポーズをもじった告白から《私より先に死なないで》という願いまで、恋は救いであると同時に、人生を変えるほど恐ろしいものとして描かれる。彼とのハーモニーで《あなたと私は永遠に一緒》と歌う“I Can’t Wait”は、最大のカタルシスをもたらすが、その高揚さえ唐突に断ち切られる。
さらに《壁に立ち向かった/そして壁に負けた》など、環境や権力への冷徹な視線も刻まれている。彼女は本作について、「自分が作っている音楽とも、その音楽が出ていくことになる世界とも、違う関係を築く必要があった」と語る。これは父の死と新たな愛だけでなく、名声と公の生活に疲れた彼女が、自分の意志で音楽を作り、再び世界へ戻るまでを刻んだ作品でもある。中村明美(中村明美)
フィービー・ブリジャーズの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』9月号に掲載中です。
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