切なくも甘い、愛と喪失をめぐる物語――スティーヴ・レイシーの最新作『オー・イェー?』がついにリリース

切なくも甘い、愛と喪失をめぐる物語――スティーヴ・レイシーの最新作『オー・イェー?』がついにリリース
かつてタイラー・ザ・クリエイターが主宰していたコレクティブ、オッド・フューチャー。彼らは下品なハードコア路線で強烈なキャラクターを押し出す一方で、ノスタルジックな美意識と、テクノロジーへの親和性を武器にする頭脳派な一面を武器にメインストリームへの飛躍を遂げた。そんな “レトロ”と“デジタル”を掛け合わせる手法によってオッド・フューチャーの哲学を体現し続ける存在こそがジ・インターネットのスティーヴ・レイシーだ。もともと彼は、iPod touchを駆使したDTMベッドルームポップをスタイルとして確立させ、ローファイブームの中でヒットを連発してきた。しかし、約10年にわたるソロキャリアの中で、その音楽性はハンドメイド主義から70年代ブラックミュージックを現代流にリメイクする方向へと舵を切っていき、無邪気でライトなアプローチは、歳を重ねるごとに官能的で大人びた表情を見せるようになった。そして去る7月17日、約4年ぶりとなるソロ3作目『オー・イェー?』がリリースされた。そんな本作最大の聴きどころは20代も半ばを超えたスティーヴの円熟した歌声もさることながら、惜しげもなくさらけ出されたエモーションに他ならない。シザとの共演曲“イズ・イット・クール?”では、フィリピン人である亡き父と、刹那的なライフスタイルをめぐる喪失を歌い、“Show You Me”では満たされない孤独感を逃避するように冗談めかしてごまかすナイーブさをさらけ出す。さらに“Doom”では、ライトなパートナーシップと欲望に屈していくことで生じる無感覚さを風刺的に批判している。一見するとそれぞれ独立したテーマを扱っているようでいて、その一連の物語には感情と愛をめぐる因果関係があり、シームレスなストーリーテリングが全10曲の音像をつないでいる。そうした流れには、世界観へと自然に引き込む“軽やかさ”と、そこに描かれた感情を自分のものとして受け止めさせる“没入感”が兼ね備えられている。それは成熟したアーティストによる構成力の賜物にも聴こえる一方で、スティーヴの青年期の終わりを告げる清算のようにも響く。(北川裕也)
スティーヴ・レイシーの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』9月号に掲載中です。
『rockin’on』9月号のご購入はこちら

『rockin’on』9月号のご購入はこちら

  • Amazon
  • Rakutenブックス
  • タワーレコード
  • HMV
  • セブンネット
  • Fujisan

※書店にてお取り寄せいただくことも可能です。
ネット書店に在庫がない場合は、お近くの書店までお問い合わせください。

rockin'on 編集部日記の最新記事
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

フォローする
音楽WEBメディア rockin’on.com
邦楽誌 ROCKIN’ON JAPAN
洋楽誌 rockin’on