前作『ハイパースペース』から実に7年ぶり!
ベックが待望のニューアルバム『ライド・ロンサム』を引っ提げ、ついに帰還を果たす。リリース日は9月18日、7月の現時点で聴けるのは先行シングル“ライド・ロンサム”、“イン・ザ・ナイト”のみとなっているが、この2曲だけでも『ライド・ロンサム』におけるベックのマインドセットを、はっきりと聴き取れるはずだ。
どこまでも澄み切った音響空間の中で、アコギとコーラスの豊かな倍音がゆったり流れゆくタイトルトラックにせよ、滋味深いチェンバーから壮大なオーケストレーションまで弦楽奏が自在に伸縮する"イン・ザ・ナイト"にせよ、今回のベックは大傑作『シー・チェンジ』や『モーニング・フェイズ』(2014)に代表される、「静」でアルチザンなベックなのだ。
『カラーズ』、『ハイパースペース』の直近2作は「動」でポップなベックであっただけに、そろそろこっち路線の作品を聴きたい、と思っていたファンも多いはず。ベック本人も自分の中に二つのペルソナがあることを認めつつ、静と動を交互に表出させてきたのが21世紀の彼のディスコグラフィーだ。今作ではスモーキー・ホーメル、ジョーイ・ワロンカー、ジェイソン・フォークナーといったお馴染みの面子が参加、プロデューサーは『シー・チェンジ』、『ミューテーション』のナイジェル・ゴッドリッチというレコーディングの布陣からしても、彼がここで選んだベクトルとコンセプトは明らかだろう。
デビューからの歳月を振り返り、「今のほうが、余計なことをせずにミニマルにする勇気を持てるようになった」と、昨年の本誌インタビューで語っていたベック。完全ソロ弾き語りのツアーから、オーケストラとの共演、ショウマンシップ全開のエンタメステージまで、7年の間に様々な表現のアウトプットを試してきた彼が今、インティメットで混じりっけのない、表現の真正性へと立ち返ったのは必然だったのかもしれない。「ぼくは時の試練に耐える、驚くような何かっていう場所をずっと探し続けていると思う」という彼の言葉を裏付けるようなアルバムの到着を、私たちは確信していいはずだ。(粉川しの)
ベックの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』9月号に掲載中です。
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