ブルース・スプリングスティーン、混迷の現代アメリカに“正義”を訴える勇姿――NYから最新ツアーを特別レポート

ブルース・スプリングスティーン、混迷の現代アメリカに“正義”を訴える勇姿――NYから最新ツアーを特別レポート

2026年のロックシーンに、なお反抗と闘争の精神があるのだとしたら、その魂がここに集結していた。そう思わずにはいられないライブだった。ブルース・スプリングスティーン&Eストリート・バンドが、「NO KINGS」と反トランプの意思を掲げた「LAND OF HOPE & DREAMS」ツアーを敢行。トム・モレロも参加し、5月16日のMSGは異様な熱気に包まれた。ボスは「無能な大統領の下で」「ロックンロールの“正義の力”を呼び起こすために集まった」と宣言。1曲目ザ・テンプテーションズの“War”の強烈なドラムが会場を貫き、間髪入れず“ボーン・イン・ザ・U.S.A.”へ。Eストリート・バンドの音は観客を奮い立たせる歓喜と連帯に満ちていた。3時間ノンストップ。ボスは1秒も無駄にせず、反抗と団結を歌い続けた。だが、ライブを突き動かしていたのは怒りだけではない。“ハングリー・ハート”で観客と大合唱を交わしながら、アメリカ人本来の善良さと連帯への信念、そして希望を訴えていた。この日、特に胸を打ったのは、ICEに命を奪われたレネー・グッドが殺される直前にエージェントへ「あなたを怒ってない」と語った話に触れた場面だ。泣いているようにすら見えたボスは、「ホワイトハウスは“アメリカという理念”そのものを破壊している」と批判し、「“アメリカの悲劇”を止められるのは、あなたたちだけ。誰も助けにきてくれない。俺たちでやるしかない」「Eストリート・バンドは苦しい時代のためにある」と観客に呼びかけた。後半はより重く現実を突きつける曲が続き、“ランド・オブ・ホープ〜”では国への祈りを捧げる。最後は、「無力感や絶望を感じているならよくわかる。だから俺たちは今夜希望や信念や強さを届けたかったんだ」と語り、ボブ・ディランの“自由の鐘”へ。傷つけられた人々のために鳴らされるその歌は、この夜そのものの祈りだった。終演後にはウディ・ガスリーの”我が祖国”が流れていた。何度観ても最高なボスのライブだが、この日はより明確な目的を持ちさらに完璧だった。観客全員の中に、アメリカの魂を再生していくような力が宿っていた。スプリングスティーンのロックが、その力を最大限に発揮した夜だった。(中村明美)

ブルース・スプリングスティーンの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』7月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。
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