クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジが600万もの観衆を集め——という表現はいささか語弊があるが——開催したパフォーマンスの模様を収めたEP『アライヴ・イン・ザ・カタコンブ』が、ファンからの熱い要望に応えてフィジカル版化される。欧州ツアー中だった2024年7月に、パリの地下に広がる納骨堂=レ・カタコンブ・ドゥ・パリで行われたこのパフォーマンス、なんと観客は何世紀も前に亡くなった推定600万とされるパリ市民の「お骨」。主格ジョシュ・ホーミはこの「死者の国」と言える異空間での演奏を切望し長年にわたり当局側と交渉を続けていたそうで、晴れて念願が叶ったことになる(観光客に公開されているとはいえ、ロックバンドに使用許可が出たのはこれが初)。本作の制作を追ったドキュメンタリー短編からも窺えるように、ロジスティクスを始め夢の実現は楽ではなかった。照明や他の機材向けに電源ケーブルを引くのはもちろん、狭い通路と低い天井から成る地下空間は音響も勝手が違う。その上当時体調不良に苦しんでいたジョシュは階段の上り下りもままならず、本作の収録終了後アメリカに緊急帰国。残りのツアー日程はやむなく延期となった。彼が復調した今だからこそ「良い思い出」と振り返ることも可能だが、ギリギリな危険状況を押しての制作だったのは間違いない。しかし、それだけの甲斐はあった。クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジは過去にも折に触れて(セミ)アコースティックなライブを行ってきた手練だが、『ララバイズ・トゥ・パラライズ』(2005)から最新作『イン・タイムズ・ニュー・ローマン…』(2023)まで、アルバム5作から選りすぐった6曲が並ぶ本作はブルージーなサイケデリアをとろ火で紡いでいく。ゲストに迎えた弦楽カルテットが添えるメランコリックな陰影、淡々としたエレクトリックピアノが積み上げる無常感、漢気あふれるジョシュの歌いっぷり。彼らの音楽に中毒性をもたらしているダークさと妖気が、いぶし銀な演奏で見事に抽出されている。次号掲載のインタビューでジョシュに話を聞くことができた。冥土から帰還し、吹っ切れた彼の発言をお楽しみに!(坂本麻里子)
クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』10月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。
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