【ライブレポート】オジー・オズボーンとブラック・サバスの最後のステージ『Back to the Beginning』。ロック史に残る一夜を完全レポート

また、この日の出演バンドのひとつであるアリス・イン・チェインズのドラマー、ショーン・キニーもごく最近、健康上の理由から一時的にライブ活動から離れていた。そうしたことを思うと、数多い出演者たちがこうして予定通り同じステージで顔を揃えることができたというだけでも、とても価値のあることなのだと感じずにいられない。

当然ながら、バンド単位での出演者たちの演奏ぶりも、素晴らしいものばかりだった。一番手の重責を担ったマストドンについては、この春にギターと ボーカルを兼ねてきたブレント・ハインズの脱退を経ていたばかりではあるものの、このバンドならではの説得力ある演奏を披露していたし、かつてグラミー賞でブラック・サバスが特別功労賞を受けた際に、授賞式の場でサバス・メドレーを演奏する大役を担ったことのあるライヴァル・サンズのステージも文句なしの素晴らしさだった。

今回のためにユニフォームのような揃いのTシャツを用意してきたアンスラックスも“らしさ”全開だったし、全出演者中の紅一点、リジー・ヘイル率いるヘイルストームの健闘も光っていた。彼女が歌ったのがサバスではなくオジーのソロ楽曲だった点も、世代感の広がりを感じさせ、良い作用に繋がっていたと思う。

ラム・オブ・ゴッド、ゴジラにも、もはや異端さや激烈さばかりではなくビッグネームとしての風格が感じられたし、パンテラ、トゥール、限定的復活を果たしているスレイヤーもそれぞれの持ち味を存分に発揮しながら“闇の祭典”を盛大に盛り上げていた。そんな中、アリス・イン・チェインズの演奏時には音響トラブルが生じていたものの、これほど出演者が多い状態で、それ以外に特に大きな問題がみられなかったこと、回転ステージの効用により転換がスムーズだったことにも感心させられた。加えて、実際の出演は叶わなかったものの、同じバーミンガム出身であるジューダス・プリースト(彼らは同日、ドイツでのスコーピオンズ60周年記念公演に出演)、デフ・レパードからドリー・パートン、エルトン・ジョンに至るまでがメッセージビデオという形で花を添えていた事実も付け加えておきたい。

そして、主役たちの登場を前にステージに現れたガンズ・アンド・ローゼズとメタリカのステージも、さすがというしかないものだった。ことにガンズは全6曲のうち4曲までがサバスのカバーという大胆な演奏内容で、中でも“ネヴァー・セイ・ダイ”は彼らのオリジナル曲かと聴きまがうほどの嵌まりようだった。両バンドは1992年にジョイントツアーを行なっているが、それから紆余曲折を経てきた両者がこうして再び同じステージに立つことになったという事実にも感慨深いものがある。

また、配信の映像でもステージの転換中にバックステージでの記念撮影時の模様が少しばかり紹介されていたが、それがまさに「選ばれし者たちによる、選ばれし者たちのためのミート&グリート」のような様相を呈していたことにも興味深いものがあった。後日、各音楽情報サイトなどでも報じられていたが、この日、オジーとアクセル・ローズは初めて対面を果たしている。そのアクセルはジェイムズ・ヘットフィールドとも再会を果たしている。そうした巡り会いがもたらされたのも、ブラック・サバスとオジーがこうした特別な機会を設けたからに他ならない。

もちろん今回の催しの実現に際しては、誰よりもオジーの夫人でありマネージャーであるシャロン・オズボーンの功績が大きいということになるだろう。影響力も実行力もある彼女には味方ばかりではなく敵も多いはずだし、このイベント自体についても当然ながらそれなりのインサイドストーリーが存在しているはずではある。しかし少なくともこの歴史的かつ画期的なイベントの成功については、水を差すようなことを一切言わずにおきたいし、彼女に対しても最上級の敬意を表したい。

この『Back to the Beginning』の約1億4000万ポンドにも及ぶ収益は、すべて慈善団体に寄付され、パーキンソン病の研究や、子供たちの治療/救済に充てられるのだという。つまりあの場に勢揃いしていたアーティストたちはすべてノーギャラで出演していたということだ。もちろん前述のように、どんな物事にも大概はネガティブな一面が少なからずあるものだし、この記事が読者の目にとまる頃には、思いがけない事実が明るみに出ているかもしれない。しかしあの日、何度も寝落ちしそうになりながらきわめて特別な時間を過ごしたことを、僕は忘れないだろう。


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