【ライブレポート】オジー・オズボーンとブラック・サバスの最後のステージ『Back to the Beginning』。ロック史に残る一夜を完全レポート

玉座とドラムセットから動きようのないオジーとビルばかりではなく、トニーとギーザーもほとんど持ち場から動くことがなかった。こうした大掛かりな公演に見合わないステージングだったことは間違いない。ただ、まるでリハーサルルームでお互いの音を確かめ合いながら演奏しているかのようなその光景もまたきわめて美しいものだったし、自分たちの発する最後の一音まで聴き漏らすまいとする4人の執念のようなものを感じずにいられなかった。

12年前、ブラック・サバスは『Ozzfest Japan 2013』に出演のため来日している。その際はビルが不在で、トミー・クルフェトス(ロブ・ゾンビ等との仕事歴を持ち、今回の公演ではオジーのソロ楽曲のパフォーマンスに参加)が参加していたが、その際の彼らのステージは演出上の都合なのか照明があまりにも明るく、まるでライトアップされた歴史的建造物のように目に映ってしまい、微妙な違和感をおぼえた記憶がある。しかし今回の最終ステージでの彼らのたたずまいは、これぞブラック・サバスというべき得体の知れない禍々しい空気を伴っていた。彼ら自身が人々にどのように記憶されることを望んでいるかが、そこに集約されていたように思う。

そうした主役の絶対的な存在感ばかりではなく、この記念すべき場に花を添えた出演者たちのパフォーマンスや貢献ぶりにも印象的なものがあった。まず今回の公演成功の立役者として称賛されるべきは、トム・モレロだろう。プレイヤーとして特に目立つことをしていたわけではない。ただ、彼は今回のイベントにおいて音楽監督的な重責を果たし、豪華絢爛かつ意外性も伴った顔ぶれにより繰り広げられたスーパーグループセッションを取り仕切ったばかりではなく、各アーティストへの出演交渉の役割も担っていたのだという。各出演者がカバーするブラック・サバスやオジーの楽曲に被りが生じていなかったのも、おそらくは彼の交通整理の賜物だろう。

また、目まぐるしい展開となったセッションの場面においての活躍ぶりが特に目についたのがヌーノ・ベッテンコートだった。おそらくはトム・モレロが彼に多くの任務を振り分けていたのではないかと想像するが、彼の対応力のすごさには感心させられるばかりだし、同時に、前述のフレディ追悼コンサートでも彼の率いるエクストリームが重要な役割を担っていたことが思い出された。

そのヌーノがギターを担当した“チェンジス”のセッションでのヤングブラッドの丁寧な歌唱振りも印象的だったし、かつてクイーンの“愛にすべてを”を熱唱した際のジョージ・マイケルの姿に重なるものを感じさせられもした。また、どうしても大御所主体の顔ぶれにならざるを得ない中で、彼やスリープ・トークンⅡ、ゴーストといった“今”を代表する世代が輝く場面が設けられていたのも素晴らしいことだと思えた。

トム・モレロの息子ローマン、スコット・イアンの息子レヴェルによるセッションによるオジーの“ミスター・クロウリー〈死の番人〉”のカバーはその場での演奏ではなく映像での披露となったが、そこに日本の若き女性ドラマー、YOYOKAが加わっていたのにも驚かされた。むしろそこで歌唱を担当していたのが俳優のジャック・ブラックだったこと以上に。

トラヴィス・バーカー、チャド・スミス、ダニー・ケアリーという3人のスーパードラマーによる共演を土台としながらのセッションにも目と耳を奪われた。スーパーグループセッションの第二幕にではビリー・コーガンがサバスのみならずジューダス・プリーストのカバーまで歌うという貴重な場面も楽しむことができたし、サミー・ヘイガーがオジーの楽曲に加え、自身の初めて書いた曲だというモントローズ時代の代表曲のひとつ“ロック・キャンディ”を披露してくれたのも嬉しいサプライズのひとつだった。

しかしこの日に実現した一連のセッションにおける極めつきとなったのが、スティーヴン・タイラーとロニー・ウッドを呼び込みながら演奏された“トレイン・ケプト・ア・ローリン”だったことは間違いない。しかもスティーヴンはそのままステージに残り“ウォーク・ディス・ウェイ”からレッド・ツェッペリンの“胸いっぱいの愛を”へと繋がっていくメドレーを歌ってみせた。エアロスミスのフェアウェルツアーが最初の数公演を消化しただけで立ち消えとなった理由は彼の喉の回復の遅れにあったわけだが、この日の彼の歌唱とパフォーマンスから、不安要素は微塵も感じられなかった。誤解を恐れずに言えば、彼がステージ上に居る間はこの日の主役が誰であるかを忘れてしまいそうにもなったが、その姿にもやはり“生”の歓びを感じずにはいられなかった。

その意味においては、オジーのソロ楽曲のセッション場面において、彼のバンドの歴代ギタリストのひとりであるジェイク・E・リーが登場した際にも、じんわりと感動をおぼえた。彼は昨年10月にラスべガスで銃撃事件に巻き込まれ、3発の銃弾を受けたが、一命をとりとめている。
rockin'on 編集部日記の最新記事
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

フォローする
音楽WEBメディア rockin’on.com
邦楽誌 ROCKIN’ON JAPAN
洋楽誌 rockin’on