ザ・リバティーンズのピーター・ドハーティ が、実に9年ぶりとなる5枚目のソロアルバム『Felt Better Alive』 を完成させ、5月にリリースすることを発表した。ピーターといえば、昨年リバティーンズとしてアルバム『東部遊歩道異常なし』をリリースした記憶が新しい。紆余曲折すぎる道のりを経た「今」を肯定したうえで、改めて凸凹なバンドが組み合った愛おしいロックンロールに、胸が震えた。よって今作は、よくある「バンドで溜まった鬱憤を発散」的なソロではないはずだ。むしろ、バンドで表現したいことを100%叶えたうえで、さらにあふれ出た表現をソロに落とし込んだのではないだろうか。
その予想は、先んじてリリースされた収録曲“Felt Better Alive”を聴いて確信に変わった。ピーター曰く「かなりバウンシーで、かなりカントリーな曲」。ペダルスティールの音色と味わいを増した歌声がマッチし、「渋み」を感じさせる一方で、澄んだメロディと心身を躍動させるリズムが漲る、まさに今のピーターを投影したような楽曲となっている。ピーターは「《ハンバー川の河口をさらう》という歌詞は、(イギリスのTVシリーズ)『ハンコック』からの一節なんだ」と明かして おり、相変わらず多彩なリファレンスを探るのも楽しい。海岸や洞窟などで撮影された、生と死を思わせるミュージックビデオ も見ごたえたっぷりだ。
アルバムの制作は、ピーターと彼の家族が暮らすノルマンディーにある田園の村からスタート。彼の友人であるマイク・ムーア(バクスター・デューリーのプロデューサーや、リアム・ギャラガーのバンドのギタリストとしても活躍)がプロデューサー兼ミュージシャンとして起用された。資料には「陽気なスピリットが漲っており、アコースティックとオーケストラ、インディフォークとカントリー、感動的ながら喜劇的でもある詩的な小作品が並ぶ素晴らしい楽曲集となっている」という説明も。きっとピーターは、自分らしく在れる環境で、荒波に揉まれても錆びなかった「芸術家としてのエッジ」を思い切り発揮したのだと思う。早く全曲を聴きたい。(高橋美穂)
ピーター・ドハーティの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』3月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。
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