見事マーキュリー賞を獲得したデビュー作『プロセス』から6年。決して短くない年月であるが、サンファはその間にもケンドリック・ラマーやストームジー、トラヴィス・スコットなど、世界の覇者たちがドロップする作品への客演を重ね、その存在感を増し続けてきた。そしてリリースされる2作目『ラハイ』は、膨らみきった期待をさらに上回って余りある破格の傑作であった。
イェジやイベイー、モーガン・シンプソン(ブラック・ミディ)など多くのゲストを招き、また彼の得意とするピアノの他、曲によって弦楽器や金管楽器、聖歌隊によるコーラスなどを駆使しているものの、それらはあくまでサンファの脳内に浮かぶビジョンを描き出すために必要なピースとして用いられている。
そう、本作には明確なビジョン、テーマがある。最愛の母を失った哀しみと向き合うことが大きなテーマであった前作に対し、本作は「超越性を追求したアルバム」であり、「何世代もの人々、音、場所をタイムトラベルしながら、私たち人間が互いにつながろうとしたり、私たちよりも大きな何かとつながろうとしたりする様々な方法を探求している」作品なのだという。
グルーヴィな肉体性を失わないままブレイクビーツが散らされ前衛化したビートに、断片的に浮かんでは消えるボーカルが掛け合わせられるオープニングの“ステレオ・カラー・クラウド(シャーマンズ・ドリーム)”を聴けば、誰もが感じるはず。豊潤な過去の遺産を武器に、未だ見ぬ未来のサウンドを切り拓こうと、未だ出会わぬ新たな他者との間に橋を架けようとする意志を。その勇気が、冒険心が、輝きを微塵も損なわずアルバム一枚を貫いているのだ。また、情報量の激増したトラックに合わせて歌の譜割もかなり先進的になっているものの、あのスウィートな声質によって滑らかな聴き心地を維持している点も素晴らしい。
どこまでもラディカルに、しかし、何よりもポップに。本作が志向するのはすなわち、大衆音楽の理想の在り方である。できるだけ多く、広く、つながってほしい。 (長瀬昇)
サンファの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』11月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。
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