ベック、ニール・ヤングの名曲“オールド・マン”をカバー。若手アーティストたちとのコラボにも力を入れる今、新たなフェーズへの期待が高まる!

ベック、ニール・ヤングの名曲“オールド・マン”をカバー。若手アーティストたちとのコラボにも力を入れる今、新たなフェーズへの期待が高まる! - rockin'on 2022年12月号 中面rockin'on 2022年12月号 中面

ベックニール・ヤングの“オールド・マン”のカバーをリリースしているが、新たな活動の先触れだろうか。あるいは、この曲が収録されたニールの名作『ハーヴェスト』が2月にリリース50周年を迎えたことへのオマージュだろうか。

アコースティックの名手だけあって見事なパフォーマンスを聴かせるが、ジャケットのアートワークもなにやら意味深である。というのも、これは1870年代にフランスの詩壇を震撼させた天才詩人アルチュール・ランボーとその当時の詩人らを描いた有名な絵だからだ。しかし、ランボーのところだけ四角く切り抜かれている。これはこの絵が描かれた当時、ランボーは18歳で、周りを囲む詩人たちはみな年長者の「オールド・マン」だったからだ。しかも、この曲の歌い手は若者なので、この絵でいうとランボーが周りの老人たちに向けて歌う曲なのだ。

実はベックとしては、ランボーを世に送り出したポール・ヴェルレーヌ(左端)と自分を重ね合わせているのかもしれない。というのも、ここのところ非常に高い評価を得ている若手アーティストらとのコラボレーションも続いているからだ。

たとえば、秀逸なエレクトロポップで知られるJoy Downerとは“Over & Out”のテレビでのパフォーマンスの際、ベースで客演し、さらに“Chain Reaction”(ベック自身の“チェイン・リアクション”とは別な曲)のレコーディングにも参加している。また、ジャック・ホワイトのサード・マン・レコードに所属する、官能とソウルを巧みに歌い分けるNatalie Bergmanとのコラボレーションも繰り返している。あるいは、初期のベックをやたらと彷彿とさせるJAWNYの“Take It Back”のニューバージョンにも何気に参加していて、ベックみたいだなと思ったら本当にベックがいたと思わせるところも心憎い。

2019年の『ハイパースペース』は、ベック特有の突き抜けていくほどの孤独感にあまりにも明確な輪郭をもたらした傑作になり、NASAが誇る宇宙の映像を楽曲に組み合わせた映像アルバム『Hyperspace: A.I. Exploration』もまた見事だった。でも、そろそろ新しいフェーズに期待したい。 (高見展)



ベックの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』12月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

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