46歳とは本当に早すぎる。
ロッキング・オン誌でも90年代は何度も記事を掲載してきた、馴染み深いアーティストだった。
1994年11月号に語った彼女の言葉が、個人的にはとても印象に残っている。
21歳の誕生日には誰かが大きな花束を抱えて
むこうから歩いてくるはずだったのに…
何もなかったの(笑)
アデル『21』のように、欧米では、20歳ではなく21歳が重要な大人への入口の記念日だ。
ドロレスにとっての21歳の誕生日は、いつものように仕事をこなしているうちに終わってしまい、特別なことがなにもなかった、という笑い話なるのだが、
プリンセスを夢見る少女のような心と、失望や挫折、それをバネにしたスケール感と力強い歌を放つ彼女のアーティストの本質をなんとなく表しているように思う。
同じ記事で、彼女はこんなことも語っている。
「今は歌うのはずいぶん楽になりましたか?」という問に対しては――誰でもそうだと思うけど……みんな、コンプレックスってあるでしょ。特に若いころは。
私は、自分の体がいやだったな。人前にさらすのが、見られるのが怖かったんだろうね。
だから長い間、ステージに上がっても観客にお尻を向けて歌ってたりしてた。
今じゃ笑い話だけど。
ええ。ツアーの最中はもう、ステージに立つその瞬間のために生きてる。
出ていって、歌って、みんなが私達の音が好きで耳を澄ましたり一緒に歌ったりしてくれて、それを引き起こしてるのが自分の歌だって……すごくない?
ドロレス・オリオーダンのことをよく知らなくでも、“ドリームス”は誰しも一度は聴いたことがるだろう。
フェイ・ウォンが“夢中人”としてカヴァーし、ウォン・カーウァイ監督映画『恋する惑星』の主題歌として大ヒットした。そして、娘のリア・ドゥもカヴァーしている。
今日は、この曲が世界中で鳴り響いていることだろう。
彼女の魂に届きますように。
ご冥福をお祈りいたします。(井上貴子)