[Alexandros]結成からの15年を辿る25分――濃密過ぎた『SONGS』を君は観たか?
2016.10.28 17:30
わずか25分の放送時間で、バンドのロマンチックな旅を追体験する濃密な内容であった。2016年10月27日夜に放送された、[Alexandros]出演のNHK『SONGS』。リオ五輪のバドミントン女子ダブルスで金メダルを獲得した、タカマツペアの松友美佐紀選手が“ワタリドリ”を聴いていたというエピソードや、ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2016で数万人のオーディエンスを沸かせる現在の[Alexandros]の姿の導入を経て、“ワタリドリ”のスタジオライブから結成15年の歩みを振り返るように番組は始まった。
川上洋平が「根性が芽生えたんじゃないですか」と語った5年間の路上ライブ。[Champagne]としてかつて演奏していた代々木公園に4人は立ち、元マネージャーの濱本氏も姿を見せる。それぞれが正社員として社会に出て、共同生活を送っていたかつての部屋を訪れたシーンでは、川上の使うトイレットペーパーの量についてケンカに至ったというエピソードも語られていた。4人で通っていた回転寿司店、500円の海鮮丼を、磯部寛之は何とも言えない表情で頬張る。当時、同じスタジオを使っていたサカナクションの機材が日に日に高く積み上がってゆくさまを見て、刺激を受けていたそうだ。
「50歳までデモテープを送ったりする気力はあるか。そうなったときに、正社員でやっていた方がいいよねって。いつまでもバイトだと、スタジオ代とか楽器代が払えなくなるんじゃないか、という考えがあったんですよ」。川上はそんなふうに語っていたが、使える時間と収入をすべてバンドライフに注ぎ込むのは並大抵のことではない。「追い込んでましたね。曲が出来るまでやろうって」。夜通しの練習の風景は、“Adventure”スタジオライブの歌詞にくっきりと浮かび上がっていた。
そして、結成から10年を経てのデビュー。ライブ会場で後ろの方の人が盛り上がっていない、という新たな課題をバネに、バンドはピュアな欲望を募らせてゆく。このシーンでは“starrrrrrr”がスタジオライブで披露された。「悔しさや葛藤」は、[Alexandros]のキャリアについて回るキーワードであり、川上の手掛ける歌詞の中でも形を変えながら、重要なテーマを担ってきた。昨年、1万人を動員した代々木公園フリーライブの光景が路上の原点と繋がり、川上は「世界一のバンドに絶対なります」というあの決め台詞を伝える。
番組を締め括ったのは、新作『EXIST!』収録曲でミュージックビデオも公開された“Feel like”のスタジオライブだ。抑制の効いたスタイリッシュなサウンドが、人知れず湧き上がる思いを映し出してゆくといった印象のパフォーマンス。番組のエンディングでありながら、それは新しい旅の始まりでもあった。『EXIST!』のリリースを待ちわびるファンも、その新しい旅のスタートラインに立っているのだろう。(小池宏和)