テイラー・スウィフトは、『folklore』と『evermore』を発表して何かから抜けて、今最強の場所にいるような気がする。
『レッド(テイラーズ・ヴァージョン)』が無事発売され、ファンが長年待っていた、”オール・トゥ・ウェル”の10分版がとうとう発表された。これを彼女がなんと米人気テレビ番組『サタデー・ナイト・ライブ』の生放送で、パフォーマンス。10分間の曲をTV番組でパフォーマンスさせてもらえるだけですごい。でもこれが全く長く感じないのだ。
映像はこちら。
さらにその前に、これを彼女が初監督した短編として発表。
主演は、彼女が大好きだという俳優2人で、『ストレンジャー・シングス』のセイディー・シンクと『メイズ・ランナー』のディラン・オブライエン。10分もあることを全く感じさせない物語が展開されるばかりか、こんなことがあったのかと観ていて心が痛くなる内容でもある。
ご存知のように、テイラーは、公式には言っていないけど、この曲は2010年に3ヶ月付き合っていたジェイク・ギレンホールとの恋愛、失恋が元になっていると言われている。
歌詞の中に、「僕たちの年がもっと近かったら、うまくいっていたかもしれない、とあなたが言ったのを聞いて、死にたくなった」とあってそこで心が張り裂けそうになる。ジェイクが29歳で、テイラーが20歳の時に付き合い始めて、ジェイクが30歳で、テイラーが21歳で別れている。年齢差は9歳だ。今回の役者の年齢差もちょうど9歳。また、この短編の中では、彼女がいかに孤独だったのかも描かれている。さらに、有名な赤いスカーフも登場する。
ただ、今は、それから時間が経過しているので、ここで彼女の経験を元に書いた失恋の物語が、『folklore』や『evermore』などのストーリーテリングに発展していったのが今ならより分かるのも良い。
彼女は『レッド(テイラーズ・ヴァージョン)』について説明していた。
「いつもその時のアルバムに入りきれなかった曲は、次のアルバムに収録すると思っていたけど、次のアルバムはその時書いたものと全く違うものになることが多くて、そこに残されたままだった。今回再レコーディングするにあたり、その曲を発掘できた。一番嬉しいのは、本来だったらこのアルバムに収録されるべきだったけど、誰も聴いたことがない、入らなかった曲を収録できること。
今回は、さらにクリス・ステイプルトンとか、フィービー・ブリジャーズとも共演できた」
”オール・トゥ・ウェル(10分版)”については。
「一番ファンに聴いて欲しい曲は、”オール・トゥ・ウェル”の10分バージョン。『レッド』を書いている時に、個人的に一番好きな曲は、”オール・トゥ・ウェル”だった。でも、大抵自分が一番好きな曲が、シングルになることはあまりないし、ビデオになることもない。いつも『これは私個人の一番好きな曲』で終わることが多い。だけどこのアルバムに限っては、この曲がファンの一番好きな曲でもあった。私個人の一番好きな曲と、ファンの好きな曲が同じだった。
それでこの曲を書いたのは、少し悲しい時で、21歳だったんだけど、バンドとリハーサルをしていて、すごく落ち込んでいたし悲しくて、それが誰にでも分かるくらいだった。それでギターを弾き始めて、同じ4コードを何度も何度も弾いて、それにバンドが加わって、その時自分が思っていたことを即興で演奏した。それで曲がどんどん続いていって、結局10〜15分になった。
終わってから母が音声さんのところに言って、『今の録音していた?』って訊いたら、『もちろん』って言って、CDをくれた。つまり、”オール・トゥ・ウェル”の10分版がもともと書かれた形だった。だけど10分間の曲なんて出せないと思ったからそれを編集して短くした。今回オリジナルの曲で、オリジナルの歌詞で出せることになったから、それが一番楽しみ」
そしてさらにダメ押し。この曲を、『folklore』などのプロデュースをした、アーロン・デズナーと彼のスタジオで、再録音。「悲しい女の子の秋バージョン」として発表した。
また、彼女の友達でもあるブレイク・ライブリーが初監督した”アイ・ベット・ユー・シンク・アバウト・ミー(feat. クリス・ステイプルトン)”のMVも公開。
これがまた痛烈だ。別れた彼氏の結婚式に、私のことを思い出す?と歌っている曲。ここでも、彼との様々な差を見せつけられて悲しくて、孤独なテイラーが描かれている。でも、少しだけ笑える軽い内容に作られているのが良い。
これには、マイルズ・テラーと彼の本当の奥さんであるケリー・スペリーが出演している。
『レッド』を発売した時と今の心境の違いは?
「『レッド』を出した時は、このアルバムに描かれていることを本当に体験していたから、本当に悲しかった。だけど今は、サングラスをかけてモヒートを飲んでいる感じ(笑)。アルバムを出して、悲しくないっていうのはすごく良い。インタビューとインタビューの間に泣いたりしなくていいのもね。この方が全然良い。時間が経過して良かった」
●10年前にここで歌われた人にとっては、10年後の今またこれを経験するのはより最悪だと思いますか?
「その人にとってはどんな体験になるのか、考えてもみなかった(笑)」
最後に笑っているのはテイラーということになる(笑)。
このアルバムは、すでに、Spotifyで2つの新記録を樹立。
1)女性アーティストとして1日のアルバムストリーミング数が史上最高。9008万回で、これは、彼女自身が2020年7月に樹立した『folklore』の7870万回を抜いての新記録
2)もうひとつは、テイラーの曲が1日で1億2290万回ストリーミングされ、1日で最もストリーミングされた女性アーティストとなった。
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