映画のサントラと言えば、最近はトレント・レズナーとアッティカス・ロスの活躍が目立ち、今年もオリジナル・スコアで2つもノミネートされた。結局『ソウルフル・ワールド』で2度目のオスカーも受賞した。
が、今回は、ジョニー・グリーンウッドが、オスカーに最も近い場所にいる!
普通オリジナル・スコアは5作ノミネートされるけど、なんと最有力候補作3作でスコアを手掛けているのだ。以下その3作ご紹介。
1)『Spencer』
クリステン・スチュワートがダイアナ妃を演じる、パブロ・ラライン監督作。サントラが1曲公開された。こちら。
聴いてもらえば分かるけど、非常にドラマチックでエモーショナル曲だ。英国王室と言えば、Netflixの『ザ・クラウン』が有名だし人気だが、この作品は、だからこそ詳細に描かれた『ザ・クラウン』とは大きく違い、ダイアナ妃が離婚を決意する前の数日間のクリスマス休暇にのみ焦点を当てた作品。そこで、彼女の心情の変化を描いているのだ。
彼女の言葉にならない感情を、ジョニーのスコアが表現している。だから、ジョニーのスコアがキャラクターの1人というくらい重要なのだ。クリステン・スチュワートもすでに主演女優賞候補となっている。
予告編はこちら。日本公開は来年予定。
2)『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
ベネディクト・カンバーバッチ主演、ジェーン・カンピオン監督作。
カンピオンは、「ジョニー・グリーンウッドは天才」とNY映画祭で語っていた。こちら予告編。
カンピオンが1920年代のモンタナを舞台に、カンバーバッチ演じる牧場主を描いた今作。女性であるカンピオンが11年ぶりの新作でわざわざアメリカのカウボーイを描くには訳がある、と言える作品だ。カンバーバッチ演じる牧場主は、これまでの映画で描かれてきたようなマッチョなカウボーイ像とは違う複雑さを抱えている。カンピオンは、今の社会に蔓延る「トキシック・マスキュリニティ」を解体するためにこの作品を作ったと言えるのだ。
ジョニーのスコアは心の奥に隠した複雑な心情や不穏な空気をうまく暴き出している。
本作は、日本でもNetflixで12月1日から配信開始。その前に11月19日から劇場公開予定。
3)『Licorice Pizza』
アラナ・ハイム出演、ポール・トーマス・アンダーソン監督。
予告編はこちら。
実はこの作品はまだ観てないんだけど、この予告編だけで、すでに最高の予感。言われていた通り、ハイムのアラナ・ハイムが出ているけど、まさか主役!?ってくらい重要な役に見える。相手役の青年を演じているのは、アンダーソン監督の作品には常連だった亡くなったフィリップ・シーモア・ホフマンの息子さんのクーパー・ホフマンだ。その他、ショーン・ペン、トム・ウェイツ、ブラッドリー・クーパーなど豪華メンツが出演。
アンダーソンは、自分の地元であるサン・フェルナンド・バレーを舞台にしたアンサンブル劇をこれまでも作ってきたが、この作品がとりわけ期待なのは、この予告編だけ見ると、青春物語、恋愛物語に重きが置かれているようで、これまでの作品の中でもかなり多くの人に受け入れられるような作品になっているのでは?ということ。
ジョニーは、物語の舞台となる70年的なスコアを作ったそう。
この映画は、アメリカでは11月26日公開だ。
この3作が現時点での予想どおり順当にノミネートされると、ジョニーがオスカーを取らない確率の方が低い! 昔アンダーソン監督が、「スーツを着てレッドカーペットに立つジョニーが見たい」と言っていたけど、今回こそ期待したい。ジョニーは、アンダーソン監督の『ファントム・スレッド』でもノミネートされている。
オスカーのノミネーション発表は、来年2月8日に発表。
アカデミー賞授賞式は3月27日だ。
ロッキング・オン最新号(2021年11月号)のご購入は、お近くの書店または以下のリンク先より。