昨年末にリリースされた“感染ルンです”がSNSを中心に話題を集め、早耳リスナーの注目の的となっている謎多きシンガーソングライター・
Tylan Willetcrass(読み:タイラン ウィレットクラス)が初ライブを行うということで、渋谷WWWは即完。一体どんな人物で、どんなライブを行うのか。私もその瞬間にぜひ立ち会いたいと会場に向かった。
開演前には、映画館のように注意事項がスクリーンに映し出され、単に初ライブだからという理由とはまた違う、独特な緊張感が漂っていた。あとで聞いた話だが、ライブの構成や映像演出、照明に至るまですべてセルフプロデュースで進めていたということにも驚かされた。
ライブが始まると、MVなどでも明かしていなかった顔がはっきりと見える。生バンドを携え、ステージを左右に大きく動き、観客を巻き込む肉体的なパフォーマンスでフロアを沸かせていく。ボイスエフェクトをかけたり、打ち込みならではのサウンド感の曲が多いが、その熱量はロックバンドのライブを観ているかのよう。初ライブだとは信じ難いほどに、ステージではどう振る舞うべきかという部分も抜かりなくセルフプロデュースされていた。
SNSの息苦しさや若年層が抱える孤独に一石を投じるような“感染ルンです”。夢や目標を持っている人を冷笑する風潮に対して真っ向から逆らう“悲しんでいこうぜ”。
見たくもない言葉がどんどんと押し寄せてきて、自分の存在すら流されてしまいそうになる時代に、Tylan Willetcrassの曲はそんな言葉の濁流を掻き分けて、「でも本当は俺たちこう思ってるんだよ」という意志を流されまいと必死に打ち立てているように聞こえていた。だから数多いるシンガーソングライターの中から、Tylan Willetcrassでなくてはならない理由を、少なくともWWWに集まった人たちは既に見出しているのだ。
そして、そういう曲を歌うTylan Willetcrassが、人間味溢れるライブパフォーマンスを見せてくれたことが嬉しかった。時代の波に人間らしく抗って、もっともっと目立つ場所に大きな目印を打ち立ててほしい。きっと多くの人々が、「僕も私もそう思ってました」とその目印めがけて集まってくるだろう。Tylan Willetcrassは新たな時代のアイコンとなるに違いない。(有本早季)
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