ツアータイトルになっている「再生の風景」は、彼らが2013年にリリースした1stフルアルバムと同じ名前になっており、活動休止から12年、あの日から止まっていた物語の伏線が静かに回収されていく瞬間に鳥肌が立った。
登場のSEが流れステージに3人の姿が現れると、再会を心から喜んでいるようなあたたかくて愛のある拍手に会場が包まれた。そして1曲目の1音目が空白の12年間を溶かすように会場に響き渡る。その奇跡の瞬間を逃さぬよう、観客一人ひとりが静かにその音を噛みしめるような時間が流れていた。
12年ぶりに姿を現した彼らだが、だからといって特別な復活感を演出するでもなく、まるで昨日もここでライブをしていたかのように自然体だった。それがthe cabsらしい帰還なのだろう。MCも最後の1曲を演奏する前までほとんどなく、音だけで観客と会話をするような贅沢で濃密な1時間半だった。
the cabsの物語はこれからも続いていく。止まっていた時間がふたたび動き出した奇跡の夜だった。(伊五澤紗花)
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