先行配信されていた“カーニバル”は、目的地がなくても思わず外に飛び出して歩き回りたくなるような軽快なリズムと、君のことを教えてほしいと手を差し伸べるポジティブな歌詞で、muqueの明るい部分を全面に押し出している。聴いているだけで元気になるような曲だ。
かと思えば、新録曲の“Ghost”ではmuque流のEDMを提示して新境地を見せている。ビートと電子音がいつも以上に際立ち、ボーカルもHIPHOPの色が強め。歌詞も《残念》《採点》《勘弁》と韻を踏み倒しつつ、表層的な言葉のやりとりに対する皮肉をにじませながら、踊れるスタイリッシュな楽曲へと昇華させている。
そしてさらに驚いたのは““Later”(Rock ver.)”。元のアレンジはゆっくりと体を揺らしたくなるような、どちらかというとチルアウトミュージックなのだが、新録バージョンはタイトルの通りロックに振り切っていてmuqueのライブパフォーマンスを彷彿とさせる。muqueのライブがパワフルでいい意味で音源とギャップがあることはこれまでもこのブログで触れてきたが、改めて音源として聴くと、なんでもできてしまうポテンシャルの高いバンドなんだなと感心する。
これらの新曲群のほかにも、『ONE PIECE』エンディング主題歌として既に話題を集めている“The 1”なども収録されている。大型タイアップソングの“The 1”とプラスアルファで新曲を収録しています、という見え方になってもおかしくないはずなのに、気合いの入りっぷりがすさまじいEPだ。
muqueがどれだけ器用で、リスナーを飽きさせない音楽を鳴らしているバンドなのかがわかる作品となっているので、ぜひ全曲チェックしてみてほしい。(有本早季)
『ROCKIN'ON JAPAN』7月号の「JAPAN JAM 2025 メモリアルブック」にmuqueのライブレポート掲載! ご購入はこちら
*書店にてお取り寄せいただくことも可能です。
ネット書店に在庫がない場合は、お近くの書店までお問い合わせください。