10/18に配信リリースされたカネヨリマサルの新曲“君にさよなら”。2023年の長すぎた夏がようやく終わりを迎え、肌寒くなり始めたこの時期にリリースされたのが偶然とは思えないほど、切なさを増す秋の夜長にマッチし、胸を打つ1曲だ。
《眠れなくなっちゃって/冴えた目で/漫画を読んだ/その中の主人公は/なんだか君に似てたんだ》と、このフレーズだけで一気にこの曲の主人公が置かれた状況を想像させるような歌い出し。削ぎ落とされたタイトなバンドサウンドは、カネヨリマサルの「3人」が確かにそこにいることを感じさせ、そのシンプルさが切なさをより増幅させているが、サビでは一気に感情があふれるかのように広がるサウンドが、これまた切なさを増幅させる。
以前のインタビューでちとせみな(Vo・G)は「なんとか前を向ける生き方がしたい」と思うようになったと話してくれた。1番では静かに歌われていた《気づいていた/分かっていた/泣かなかった/泣きたかった》がラストのサビでは力強く歌われるが、そこから浮かび上がるのは《わたしはなんとかやっていくよ/今は強がりでも/今は見えなくても》と――そうありたいと願う彼女の祈りだ。
カネヨリマサルは青春の中にある悲しみも苦しみも、そこにある確かな温もりも、感じたすべてを歌にすることで自分自身を、そして「あなた」を救ってきたバンドだ。3ピースのギターロックという最小限のフォーマットで表現される「青春」には、儚さと力強さが共存していて、これこそがロックの醍醐味だと思えるくらい、最高だ。(竹内ほのか)
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