チューニングの話 前編
2010.04.27 15:06
ライブにおいて、かねがね不思議に思っていたことがある。
先週木曜にゲイリー・ムーア、金曜にアナログフィッシュ、
土曜と日曜にフラワーカンパニーズを観たことで、
いよいよそれが強くなったので、書くことにしました。
BGMが止まって客電が落ち、SEがかかってメンバーがステージに登場し、
SEが止まって、さあ始まると思ったら、いきなり楽器をチューニングする
ギタリスト、もしくはベーシスト。
あれ、おかしくない?
アナログフィッシュの下岡晃&佐々木健太郎、そうだった。
フラカンは、ベースのグレートマエカワはしないけど、
ギタリスト竹安堅一は、2日ともそうだった。
出てきて3曲プレイして、1回目のMCの時間にチューニング、
とかならまだわかる。その3曲を弾く間に、チューニング狂ったかもしれないし。
でも、開演時には、まだ弾いていないのです。
で、ステージに出ていく前に、チューニングは、完璧に合わされているはずなのです。
なんでそこで、いちいちチューニングを確かめる。
始まるのを待ちわびている、お客様を待たせてまで。
寿司屋のカウンターで、「シメサバお願い」「あいよ!」って
答えた板さんが、いきなり包丁を研ぎだすようなものだと思う。
「前もって研いどけよ!」って話だ。
いや、だから、前もってちゃんと研いであるのに、
わざわざ研ぎ直している、ということですね。
晃くんや健太郎や竹安は。
要は、調弦を確かめることよりも、演奏直前に、
あの行為をすることによって、心を落ち着けている、ってことなのかなあ。
と、知人(某大手レコード会社勤務・ずっと制作畑を歩んできた
人で、楽器や演奏に詳しい)にきいたら、「そうだ」という。
たまに、ステージの上の照明などによる温度変化で、
置いといたギターのチューニングが変わってしまうこともあるが、
たいていの場合、始まる直前に、ローディが出てきて、
チューニングの最終確認をしてくれるので、それも問題ないという。
彼曰く、
「ムエタイの選手って、試合前に神に捧げる踊りを踊るじゃない?
あれと一緒だと思う。あれをやることによって集中する、みたいな」
だそうです。
「ああ、そうか。でも、それ楽屋でやれよ! 客前でやるなよ!
って思わない?」
と言ったところ、
「いや、だってムエタイの選手に、『控え室で踊れよ!』とは言わないでしょ?」
と返された。
にしても。
渋谷陽一の持論に、「うまいギタリストはチューニングを直さない」というのがあるが
(前にもネタにしました。これ → http://ro69.jp/blog/hyogo/19035 )、
確かに、ゲイリー・ムーアは、全然チューニングを直さなかった。
高橋智樹のライブレポによると、ジェフ・ベックも、全然チューニングしないという。
(これ → http://ro69.jp/live/detail/33220 )
あのクラスになると、「いくら激しく弾いてもチューニングが狂わない奏法」を、
身につけているのかもしれない。
と、前述の知人にそう言ったところ、そうではない、という。
長くなったので次回に続く。