トム・ウェイツ、最新作がファンにウケた理由は「俺が歳を取ったから、死ぬ前にちゃんと聴いといてやろうとでも思ったんだろう」と語る
2011.11.19 16:00
10月にリリースされた最新作『バッド・アズ・ミー』が米ビルボード・チャートで初登場6位を記録し自己最高位を獲得したトム・ウェイツ。彼が答えた日本からのインタヴュー全文が随時オフィシャル・サイトにて公開されている。
―今作は7年ぶりのスタジオ・アルバムで、その間に企画盤『オーファンズ』やライヴ・アルバムを発売しているとはいえ、7年というブランクはファンにとっては長いものですが、今回スタジオ・アルバムを作ろうと思ったきっかけは何ですか?
T:この7年の間も様々な作品を出してきた。しかし、完全に新しい、つまり新曲ばかりを収録したものじゃないと人には取り合ってもらえないものなのさ。おそらくみんな曲を「魚」あるいは「パン」のように思っているのだろう。新鮮なもの、作り立てのものじゃないと疑ってかかる。よくわからないが。完璧な形で再現された曲だって素晴らしいはずなのに、大衆はそうは思っていない。みんな古い新聞は読みたがらないんだ。
―なるほど。ちなみに新作の楽曲は全て最近書いたものなのですか。あるいは何年もの間書き貯めていた曲なのでしょうか。
T:全て短期間で書き上げた曲だ。今年の春に書いて、夏にレコーディングして、秋にリリースした。
―ということは、ご自身で「そろそろ新しい曲でも書くか」と思うきっかけが何かあったのでしょうか。
T:時には、暫くの間曲を書くのを止めていると、ホースの口を塞いだように、中で圧がどんどん溜まっていくんだ。それが、一気に爆発する。まるでトゥーレット症候群のように。トゥーレット症候群は知ってるかい?
―説明していただけますか?
T:人前でいきなり叫び声やうなり声を発してしまう症状のことさ。ある人が、普通にレストランへの道順を教えてくれてるかと思いきや、いきなり「ファック!」と叫び出す。「ファック!ファック!ファック!」ってな。で、また何事もなかったかのように道順の続きを教えてくれる、それがトゥーレット症候群だ。つまり、俺にとって曲というのは、どう生まれるかっていうと、腹からカエルが飛び出すようなものなんだ。それが舌から飛び降りて皿の上に乗っかるっていう。自分の意志でどうにかできるものじゃない。で、「よし、じゃあ新しい曲を書くか」ってことになったら、今度はスケジュールを確保しなきゃならない。というのも、俺一人ではなく、ソングライティング・チームで書くわけだから。(妻でもある)キャスリーン・ブレナンと一緒に曲を作る。だから、二人が一緒に作業ができる時間を確保しなればならない。難儀ではあるが、その価値は十分にあるさ、音楽を作るためにはね。
―また今作『バッド・アズ・ミー』アルバムは米ビルボード・チャートで初登場6位にランクインし、(1999年の『ミュール・ヴァリエイションズ』が獲得した30位から)20位以上もランクアップさせての自己最高位となりました。今作がこれだけファンに受け入れられた理由は、貴方自身は何だと思いますか?
T:俺には全く見当もつかない。おそらくみんな飢えていたんだろう、というくらいしか俺には答えられない。人間ってのは、おかしな生き物だよ。
―最近の音楽の風潮の中で貴方の作品の誠実さが際立ったからだと思いますか。
T:いや。俺が歳を取ったから、俺が死ぬ前にちゃんと聴いといてやろうとでも思ったんだろう(笑)。「今のうちにヤツのライヴを見に行っといたほうがいい。もう歳だからな!」ってな。
―いやいや。今後もどんどん素晴らしい音楽を作り続けてもらいたいです。
T:俺だってそう思っているよ。でも、世の中の傾向っていうものも俺は知っている。
なお、このほかにもインタヴューでは今年度の「ロックの殿堂」入りを果たしたことなどについて語っている。インタヴューの全貌は、日本オフィシャル・サイト(http://www.sonymusic.co.jp/tomwaits)にて随時公開となる。